
最近の「BUBKA」ではプロレスラーのインタビューが載っていて、今月号はマサ斎藤でした。病気になってからなかなか表舞台に出て来なかったので「元気で何より」と思って読んだのだけど、相変わらず無茶苦茶な事を云い捲くっていて安心しました。マサ斎藤は小鉄の後に「ワールドプロレスリング」の解説を務めていたのですけど、唯我独尊の語り口が有名でした。以前も書いた様に、平気でマスクマンの正体を明かしたりするので関係者はハラハラものだったでしょう。其の辺を訊かれたマサは「俺は正体を知ってるけどさ、でも、夢を壊すから云わない」なんぞと嘯きますが「云ってましたよ、ライガーを山田とか」と突っ込まれると、
「そんなのみんな知ってるじゃん!」
と斬り捨てます。いや、確かに知ってるけどさ。大阪での猪木戦で海賊男が乱入した試合にも「アレはアクシデントで俺はその被害者よ」と呆気羅漢とネタバレしちゃうのだ。(ピーター本によると、あの時の海賊男はクロネコで段取りを忘れて間違えてマサ斎藤に手錠をかけてしまったらしい。)「日本人レスラーで変わっているのは俺だけ」とも断言しています。此れって、例えば「猪木は何をするか分からない」とかの幻想をひとことで粉砕してしまう重大証言なのですよ。
其れで噺は「猪木VSホーガン(1983年6月2日・蔵前国技館)」に戻すのですが、此の時の実況はフルタチで解説は桜井さんと小鉄です。三年越しの「IWGP構想」が決着する時ですので、小鉄の解説も熱が入り捲くっていてですね、ホーガンが猪木をバックドロップで投げると「あっ!今、オレが、、、あたしがアブナイって思ったんですよっ」等とコーフンを隠し切れません。そんな「解説を忘れて猪木を応援する小鉄イズム」が炸裂したのですから、悪夢の様な結末での狼狽ぶりは尋常では在りません。「救急車、呼ばなきゃダメですよ!」「動かさない方がいい!」と本気で心配し、挙句に「ちょっ、、、(おそらく、ちょっと待ってください、と御馴染みのフレーズを云おうとしたものの、其れどころではなかった)」と云って、解説を放棄してリングに駆け上がります。猪木の一大事に矢も盾もたまらずと云ったところでしょうが、リングに上がった小鉄は気が付くと上半身裸になっているのです。何やらホーガンに突っかかっていったりもして、完全にマジです。こんなにも真剣に自分を信じていた小鉄すらも、猪木はアッサリと騙したわけだ。そして、マサ斎藤に云わせると、そんな猪木ですら「全然、普通の人」なのだ。
(小島藺子)