改編期になると楽しみにしているのがテレビ東京の「元祖!大食い王決定戦」なのですが、今年(2011年)は1月の「全国縦断新女王発掘戦」を最後に放送されていません。東日本大震災の影響で4月に予定されていた放送を自粛し「無期限休止」となったわけですが、世の中には「大食い」よりも不謹慎な番組が沢山平気で垂れ流されているのです。何ゆえ「大食い」は何度も槍玉に挙げられるのでしょうかしらん。ただ単に「どれだけいっぱい食うか?」を競うだけで不謹慎とは如何なものか。でも、テレビは「食」に関してはデリケートです。其れで、一時期は他局でも競合番組やドラマなどまで在った「大食いブーム」も去り、踊らされた「フードファイター」の方々も色々と悲喜こもごもな人生を歩んでおられます。
リアルでガチな大食いは暫くテレビ桟敷では拝めないので、実写版の「喰いしん坊!」全四作DVDを先日「半額の日」にまとめて借りました。原作は御存知の通り、食い道楽マンガの巨匠・土山しげる先生の大傑作マンガです。現在も徹底的に「食」に拘った作品を発表し続けておられる土山先生ですが、近年では四年半の長期連載となり日本漫画家協会賞優秀賞も受賞された「喰いしん坊!」が、図抜けて面白いっ。其の面白さは、以前も書いた事ですが「主人公が只、食っているだけ」と云う話を、意味も無くドラマティックに描いている事でしょう。其処に展開されるのは、大食いによる「プロレス」です。そんな爆笑人気マンガでしたので、うっかり実写化されてしまいました。主役の大原満太郎は河相我聞、ライバルのハンター錠二には萩原流行と、有名俳優を起用し、一作目と二作目は劇場公開までされております。
其れで、肝心の内容なのですけど、コレがトンデモです。三作目と四作目は「Vシネマ」なのだけど、最初から「Vシネマ」のノリなのだ。主要キャストに我聞と流行と来ますが、他がもう目も当てられないキャスティングです。ほとんどが「お笑い系」や「現役のフードファイター(ジャイアント白田、ギャル曽根)」と云った「演技の素人」を配しています。丹下御前が岡崎二朗とマトモな役者なのに、対する遠山響子が野村沙知代ですよっ。殿下や大門、那奈代目くいしん坊・村野などの役者を脇で贅沢に使いながら、物語に大きく関わる役がヘッポコばかり。原作では重要な役だったトレーナーの犬丸を三瓶って、おいおい。と思ったら、実写版の犬丸は二作目までで存在自体が消えてしまいます。確かに、アノ棒読み大根演技では降ろされても仕方ないでしょう。また、淀川を二作目では大門正明が演じていて「おっ、此れは好い配役だ」と思わせたのに、三作目から変わってしまいます。しかも何故か淀川が二人組になって、仲良く科白を分け合うのでした。
2007年から2008年まで順調に四作も制作されたものの、物語の途中で終わってしまいます。そもそも四作も続けるとは思っていなかったのかもしれません。其れは、一作目に後の展開からも脚本に加えられたと思われる描写がある事からも伺えます。基本的には原作の流れに沿って進むものの「喰いワングランプリ」予選の途中辺りで疾走し、原作には無いエピソード(マジック坂田の噺からを大幅に改変)で終了。盛り上がって来た対決の行方は放り投げられ「未完」で御座居ます。おそらく、途中からはもっと続ける気も出て来た様で、鳥飼の過去を示唆する伏線なども張っております。でも、何だか分からないトコで打ち切りなのだ。其の鳥飼を演じる「ほっしゃん。」が、結構好い演技をしています。いえ、他が酷過ぎるわけだが。熊田を演じるのはジャイアント白田なのだけど、演技は無理(青葉菊子役のギャル曽根を見れば納得)と思ったのか、途中で「整形して別の顔になった」と強引な設定で別の役者に代わってしまうとか、眩暈がする様なスットコドッコイ実写版です。何もかも、行き当たりばったりな実写化だったのでしょう。
そんな中でマトモな役者である主役・我聞は、孤軍奮闘の演技を続けます。ラーメン店を経営していただけあって、食いっぷりもなかなかよろしい。もう一人の主役格である流行も頑張ってはいますが、どうせコスプレするなら髪は金髪に染めて欲しかったナァ。何故か「TFF」参人衆が、マジック坂田を救おうとした満太郎と対決し負けるのですが、どーゆーわけか「TFF」なのに関西弁だぞ。四作目に出てくる子役(マジック坂田の息子)が「男の子役なのに女の子が演じる」ってのは何だ?「空念」は猫ひろしでいいのか?そんでもって、「モーニング娘/後藤亜紀子」は「できちゃった結婚」の綾小路麗奈じゃまいか。う〜む、ダンダンダンと片瀬那奈ちゃんに近づいて参りました。続編を作る気があるのならば、片瀬那奈ちゃんもキャスティングしてはどーでしょう。我聞の満太郎は結構ハマっているから、中途半端なコスプレしか出来なかった流行を降ろしてですね、ハンター錠二を片瀬クンが演じるってのはどーだい。熊田が整形して別人になるんだから、ハンター錠二が性転換したってええじゃまいか。何なら、子役の女の子みたいに男装でもアリでしょう。もう、此の作品は「何でもアリ」ですよ。原作は多くの方々にオススメしますが、実写版はコアな片だけが愉しむべきブツでしょう。あたくしは、キライではありません。
(小島藺子)