ロック・スターには豪快なことを云って欲しいし、実際莫迦なことを云ったりやったりするもんです。
例えば、ストーンズだとインタビュアーに「貴方はもう億万長者なんだから、いつまでも新作を作ったり、ツアーに出たりしなくてもええでしょう?そんなに稼いでどーすんの?」とか失敬な質問をされたミック曰く
「あのなぁ、金ってのは幾ら在ってもたりねーんだよ、ガッハッハッハ!!」とかね。
ヘロイン中毒で全身の血を入れ替えて九死に一生を得たキースが
「なんだ、こんないい治療法があるんじゃねーか。こりゃ薬やめらんねーな、ぶわっはっはっは!!」と云ったとかさ。
ビートルズも負けてないよ。ジョンとジョージは神様になっちゃったけど、生きてる頃から発言に重みが在るみたいに思われてたもんです。でもポールを批判した「HOW DO YOU SLEEP ?」なんてとんでもない曲を書いたうえに、其のアルバムにポールの「Ram」のジャケットを小馬鹿にしたポートレート(羊のかわりに豚を使ってる)を付けたりするジョンは、悪意の権化ですよ。「キリストより有名だ」と云っといて「オレ様はキリストだ」(ビートルズの末期、丁度髪と髭を伸ばし放題になってた時期に、突然アップルで重大会議をやるぞっ!って人を集めておいて、ひとこと「オレは、キリストだ」って云ったらしいよ。ヘロイン中毒状態とは云え、莫迦すぎる、、、)とか云うし。
ピアノの弾き語りで喜々として「眠れるかい?」(ポールは目が大きいから、昔からこー云って莫迦にしてたらしい)をジョージに聴かせて、ジョージが「まさか、コレをレコードにするなんて云わないよね?」と訊くと「げへへへ、するに決まってんだろ?」って映像(「Gimme Some Truth - The Making of John Lennon's "Imagine" album」で観れる)には、背筋がぞっとしました。其れが入ってるアルバムが「イマジン」なんだから笑う。生涯最高のパートナーをこきおろして、何が「世界平和」だよ?キリストなら、まずは「隣人を愛せよ」なんですよ。
其の点じゃ、ジョージは聖人なんて云われてて、デレクとのいとしのレイラ(パティ)を巡るドロドロでも「大人の対応」だ、なんてことになりました。なんせ元奥さんと間男クラプトンの結婚式に出席したばかりか、ポールとリンゴも連れてってビートルズを演奏したらしいからね。アホか?でもエヴァリーの「BYE BYE LOVE」を、マイナー調で恨みがましく歌ってるレコード「Dark Horse」が在るじゃねーか。つーか、クラプトンに寝取られる前に、ジョージはリンゴの嫁(モーリン)と浮気しちゃってますから。ジョージ、リンゴ、クラプトンって、昔から矢鱈と仲がええんだけど、そーゆーことかい、、、
隣人愛し過ぎ。ま、真の天然「天才バカボンのパパ」って云ったら「サー・ポール」だね。サーになって最初の発言が「大麻を合法化してくれ」だったしな。スモーキング・モジョ・フィルターズ(ポールとポール・ウェラー、ノエル・ギャラガーの変名ユニット)だって、ホントはウェラーとノエルでやってたら、「おまえらこそこそ何やってんだよ?ん?カム・トゥゲザーをカヴァーするってぇ?おいおい、それじゃオレ様が居なきゃしょーがねーだろ?」とか云って、挙げ句に「駄目だダメだ、ジョンはそんな風には歌わない。よし、オレ様が手本をみせよーじゃねーか」と出しゃばりまくって、ギター、ピアノ、バック・ヴォーカルとやりたい放題。プロモで、うんざりした顔のウェラーとノエルを観て、涙が出たよ。(てか、げらげら笑った。)ジョージの追悼ライヴでも、自分を揶揄された曲を喜んで演奏してたもんなぁ。あれだけ莫迦だと、まわりも逆に気を使うんだろーなぁ。だからコステロと組んだ時に「おまえの書く曲はゴミだな」とか云われて、感動したりするのね。裸の王様なのよ。
そー云う話だと、クラプトンがフィル・コリンズにプロデュースしてもらった時にギター・ソロを弾いたら、フィルに「うーん、なかなか良かったけど、もう一回弾いてよ」と云われて愕然としたってのがええな。ギターに駄目出しされたの、初めてだったらしい。「『何故だ?!』と激しく落ち込んだんだよ、むふふふ」と得意げに語る禿げコリンズも戴けなかったけどな。コリンズが子役時代に「ハード・デイズ・ナイト」に出たって自慢話も、とほほだったぞ。「もう最高だったよ、ビートルズは観れたし、弁当も出たんだ」だってさ。弁当って、、、。
段々しょぼくれた話になっちゃったな。豪快な我侭野郎はおらんのか?あ、いたいた。御大チャック・ベリー。還暦祝いの映画「ヘイル・ヘイル・ロックンロール」は大笑いしたなぁ。キース・リチャーズが仕切ってんだけど、我侭やり放題なんですよ、あのじじい。あのキースが顎でこき使われて泣き入っちゃうんだもん。「チャック、頼むから真面目にやってくれよ」ってキースに云われたくねーよな。
リンダ・ロンシュタットが出てくるとケツを追っかけまわすエロじじいぶり全開(十八番のダッグ・ウォークでリンダの周りをぐるぐる廻るんだけど、視線はお尻に釘付けなんだよね)だし、ジュリアン・レノンと「ジョニー・B・グッド」を感動的に共演しといて「昔、お前のオヤジとも演奏したっけなぁ、似てるな。」ジュリアン号泣。感動の名場面だ。
で、とどめのひとこと
「あ、そーだ、帰ったらオヤジによろしくな☆」おいおい、もういねーよ。
(小島藺子)
初出「COPY CONTROL」
「RUMOURS」(2005-7-27)