w & m:
LENNON / McCARTNEY
P:ジョージ・マーティン
E:ジェフ・エマリック
2E:フィル・マクドナルド(4/6、7、22、27、6/6)、ジェリー・ボイズ(6/22)
録音:1966年4月6日(「MARK I」take 1-3)、4月7日(take 3 に SI 「テープ・ループ」)、
4月22日(take 3 に SI 「シタール、歌」)
MONO MIX:1966年4月27日(take 3 より 1-9)、6月6日(take 3 より 10-12)
STEREO MIX:1966年6月22日(take 3 より 1-6)
1966年8月5日 英国アルバム発売 (
「REVOLVER」 B-7)
パーロフォン PMC 7009(モノ)、PCS 7009(ステレオ)
ジョン・レノンの怪作で、アルバム「REVOLVER」の末尾を飾ります。データでお分かりの様に、レコーディングは此の曲から始まっており、当初からビートルズは全く別次元へと向かっていたのです。基本的には1コードで展開し、レノンお得意の単音進行ヴォーカルがレズリー・スピーカーを通し不気味に響きます。バックではリンゴのバスドラムとポールの極太ベースが鳴り響き、ジョージのシタールとタンブーラが絡み付き、主にポールが作ったテープ・ループが飛び交う摩訶不思議な音楽絵巻は、発表から半世紀近く経た現在でも余りにも前衛的です。所謂ひとつの「サンプリング」を、1966年に発明してしまったわけです。エンディングでフェイドアウトしていく時に、おそらくマーティンが弾いたピアノが唐突に現れるのも魅力的です。
此の様な其れまでには考えられなかったサウンドを、あくまでも「三分間のポップス」として成立させてしまったビートルズの底知れぬパワーを感じます。詩と曲はレノンですが、タイトルになった歌詞には登場しない文法を無視した「TOMORROW NEVER KNOWS」は、
「A HARD DAY'S NIGHT」同様に「リンゴの云い間違い(リンゴは幼少時に病弱でマトモに学校へ行けず英文法が分っていないのです)」をレノンが拝借したものですし、演奏は完璧なビートルズ+マーティンの熱演です。さらに、ポールが中心になったサウンド・エフェクトや、レノンの無理難題を実現させたマーティンとエマリックの功績も大きいでしょう。
ビートルズの楽曲は、昨年リマスターされた際に「ホワイト・アルバム」まではステレオとモノラルで発売されました。彼等にはテイク違いはほとんど存在しませんが、データでお分かりの様に1968年まではステレオとモノラルで別ミックスをしていたのです。ゆえに多くのミックス違いが存在し、少し上級のマニアにとってはお宝となりました。ビートルズはモノラルを重視していて、モノ・ミックスには立ち会っていますが、ステレオはマーティンたちにお任せでした。「ビートルズは、やっぱ、モノだよね」と云えたなら、貴方も立派な「ビーヲタ」です。此の複雑怪奇な楽曲も当然乍らステレオとモノでは違いますが、英国初回モノ盤の一部(マトリクス XEX606-1)では、全く別のモノ・ミックスが収録されています。音源自体は海賊盤で容易に聴けますが、原盤の価格は凄いよ。
(小島藺子)