w & m:LENNON / McCARTNEY
P:ジョージ・マーティン
E:ジェフ・エマリック
2E:フィル・マクドナルド
録音:1966年5月9日(take 1-10)、5月16日(take 10 に歌を SI し、take14)、
5月19日(take 14 にフレンチ・ホルンを SI)
MONO MIX:1966年6月6日(take 14 より 1-6)、6月21日(take 14 より 7-8)
STEREO MIX:1966年6月21日(take 14 より 1)
1966年8月5日 英国アルバム発売 (「REVOLVER」 B-3)
パーロフォン PMC 7009(モノ)、PCS 7009(ステレオ)
ポール・マッカートニーの作品で、彼がピアノ、クラビコード、ベースを奏で歌っています。リンゴ・スターがドラムスとパーカッションで参加しているものの、基本的にはポールのソロでしょう。ジョン・レノンとジョージ・ハリスンは参加していません。印象的なフレンチ・ホルンを吹くのはロンドン交響楽団のアラン・シヴィルです。此のパートはかなり難易度が高い演奏なのですが、エマリック証言によれば、天然ポールは「お前はプロなんだから吹けるだろ?」と平然と云い放った様です。ジョン・レノンも絶賛の名曲を支え、ポールの無理難題に応えたアランの功績は大きいですね。
ひとつの愛の終わりを淡々と歌う感動的な名曲で、其の対象はポールの当時の恋人だった美人女優のジェーン・アッシャーでしょう。前作「RUBBER SOUL」での「YOU WON'T SEE ME」や「I'M LOOKING THROUGH YOU(君はいずこへ)」から連なる「ポールとジェーンの物語」です。ポールがジェーンと別れるのは未だ先の事なのですが、ポールは「もう、ダメポ」と思っていたのかもしれません。てか、マスオさん状態で浮気三昧だったポールが悪いに決まっているのよさ。マスオさんが浮気し捲くっていたら、サザエさん一家は崩壊しちゃうでしょ。でも、ポールはケダモノだからやり捲くるのだ。
ジェーンと不仲になった事を書く楽曲は、完全にポール目線で相手の立場をひとかけらも考えていない「ボクちゃん大好き!ボクは悪くないもん!」と云う自己中心的過ぎる自分だけに都合のいい内容ばかりです。其れなのに、曲は素晴らしいのだ。其の揺るぎない自己愛こそが、ポールの魅力でもあります。確かに曲が書かれたり録音された背景を知るのは面白いのですけど、其れを知ったからと云ってあたくしたち個人が其の曲から受けた感動は揺るぎません。楽曲は、独立して存在します。作ったポールよりも、楽曲の方が遥かに上になってしまう。其れが「芸術」です。素敵じゃないか。
(小島藺子)