昔住んでいた八木山のアパートにいる。お腹が空いたので、セブンイレブンに買い物に行く事にした。普通の道だと高校の広いグラウンドをぐるりとまわり道しなければいけないのだけど、けもの道を知っているので崖を登って近道をする。確か、炊飯器に冷や飯が残っていたと思い出したので、烏賊の塩辛を買ってお茶漬けにしようと決めた。
セブンイレブンの隣はガソリンスタンドで、店員さんから「またガソリンを買って行ったんですけど、気味が悪いですね」と云われる。其のよくガソリンを買って行く客が前方を歩いて、さっき登って来た秘密のけもの道を降りていったので、スタンドの店員だったはずの今は友人Sになった男と後をつけた。
ガソリンをタンクに詰めた奴は、僕のアパートに入って行った。山の中なので鍵を締めずに出て来てしまったのだ。友人Sは「未亜さんっ、放火魔ですよ」と興奮している。ジープを運転して後輩のCも駆けつけた。大勢がアパートを取り囲んで踏み込もうとしている。
僕は部屋にひとりでガソリンを呑んでいて「五月蝿いナァ」と思ったら、ドアが開いて「いた、いた。今晩、泊めてくれよ」と知らない人が二人組で入って来たので、煙草に火をつけた。真っ赤になった部屋で三人でガソリンを呑んで楽しく笑っている。赤と黒の二色しか見えない。そう云えば、あの塩辛はどうしたんだっけナァと思っている。
(姫川未亜)