「1985.4.18」と云えば「猪木vsブロディ 運命の対決」です。当時の新日は、前年の「UWF旗揚げ」と「ジャパン・プロレス離脱」で人材がスッカラカンになっておりました。それで起死回生で全日常連のトップ外人レスラーだったブルーザー・ブロディを引き抜いたのです。
ブロディは移籍直前のタッグマッチで対戦した長州に何もさせずに一方的に叩きのめして、挙げ句に試合放棄すると云う暴挙に出ます。そして、ベートーベンの「運命」に乗せてスーツ姿で猪木の前に現れたのでした。此処までの展開は、煽りとしては最高級です。
初対決を迎え、TV中継では入場前にブロディが猪木の控え室に乱入し左腕を殴打する場面が流れました。会場に詰めかけた観客は知らなかったでしょうけど、入場時に「イノキ・ボンバイエ」がフルコーラス流れる中でガウンも着ないで左腕に包帯を巻きまくった猪木が登場し、異変に気付くのです。ワクワクするね☆
片腕が使えない猪木は一方的に攻め込まれますが、所謂ひとつの「魔性の力」で必死に応戦します。ブロディは、必殺の卍固めを後方に倒れ込んで外してしまったり、延髄斬りも何発もくらわないと倒れなかったりと「最強外人レスラー」を大いにアピールしますが、猪木がブロディの右脚に攻撃し始めて変な事になります。プロレス者には御馴染みの「ブロディのカミソリ事件」です。タイツに隠し持っていたカミソリをブロディが何度も使って、在ろう事か自分の脚を切って居るのです。
額を切る流血ギミックには慣れていましたけど、自分で脚を切りまくるなんて初めて観ましたよ。試合は流血したブロディの脚を泣き乍ら蹴りまくる猪木が俄然優勢に転じますが、へっぽこミスター高橋は失神しちゃって、小鉄が放送席から飛び出して、両者場外乱戦となり、しっかりブロディは最後にパイルドライバーを猪木に炸裂させるものの、両者リングアウトになります。猪木はすぐに立ち上がってブロディの脚を蹴りまくり、逃げ惑い乍らブロディは退場するのでした。此の落ちは、決まっていたんでしょうね。
さて、此の試合をあたくしは200回位は観ていると思うのですけど、どこまでが決まっていた事なのかは分りません。試合前に猪木が襲われるのは、TVカメラが追いかけているので決まっていたのでしょう。其れに対してブロディが脚から流血ってのも、お約束だったのでしょう。解せないのは、終盤で猪木が泣き乍らブロディの脚を蹴りまくる場面です。完全にイッているとしか思えないのですよ。特に号泣し乍ら蹴ってロープ際まで追い詰めた時に、猪木が両腕を広げて咆哮するのが名場面なのですけど、演技を超えています。
頭が良くてプライドも高いブロディは、例えば猪木のバックドロップを受ける時にも自ら「さあ、投げてみなさいよ」とばかりにクルリと背を向けたりします。徹底的に猪木は小馬鹿にされていたのかもしれません。猪木とブロディは其の後も何度か闘いますが、完全決着はありませんでした。誰とでも其れ也の名勝負を展開出来る猪木でも、ブロディとは手が合わなかったと思えます。てか、ブロディって全盛期の馬場にそっくりなんだよね。
(小島藺子)