出演作:『いのちのいろえんぴつ』(テレビ朝日系)
放映日:2008年3月22日(土曜日 21:00〜23:11)視聴率 11.8%
(撮影:2007年8月〜10月、オール北海道ロケ)
実話を元にし、不治の病に健気に立ち向かう少女「豊島加純(藤本七海ちゃん)」と「担任教師・香川泰介(国分太一さん)」の交流を描いたドラマ「いのちのいろえんぴつ」が放映されたのは2008年3月です。しかし、実際に撮影されたのは前年2007年の夏から秋に掛けてで、片瀬那奈ちゃんにとっては連ドラ「地獄の沙汰はヨメ次第」と「暴れん坊ママ」や「未来遊園地」と併行しての撮影でした。「未来遊園地」も群馬県でのロケーションですが、此の作品は全て北海道厚岸町で撮影されましたので、片瀬クンは「東京、群馬、北海道」と飛び回り乍ら多彩な役柄を演じ分けなければなりませんでした。
「鳴海京子」は、主人公かすみちゃんが通う小学校の音楽教師です。美人で子供たちからは「きょうこちゃ〜ん!」とアイドル並の声援が起こる人気者ですが常に冷静沈着な模範教師の為、熱血教師である香川と教育方針の違いから激しく対立します。例えば、かすみちゃんは右手が上手く動かせなくなり音楽の時間にリコーダーを吹く振りをします。京子先生は其れを知りつつも普通に授業を続けますが、香川先生は「分っているなら歌を歌うとか、豊島にも出来る授業をして下さい!」と頼むと「彼女中心に授業をやれとおっしゃるのですか?生徒は彼女ひとりではありません。それに、あたしが豊島さんなら、そんな差別みたいな事をされるのは嫌です」と返します。どちらの主張も「子供の気持ちを考えた正論」ですので、二人の対立は激化してゆきます。
懸命に生きようとするかすみちゃんがもうすぐ死んでしまう事を知っている香川先生は、自分の無力さに苛立ち、純真に未来を信じて描いた絵日記を見せられた時に思わずかすみちゃんの前で泣いてしまいます。其の姿を目撃した京子先生は「むかつく、あたし生徒の前で感情を剥き出しにする教師って、みてるとムカつくんです!」と激しく非難します。京子先生も生徒を思う気持ちは人一倍持っており、其れを押し隠して冷静に接するのが最善の道だと考えているのです。香川先生は泣いた事でかすみちゃんに余命幾ばくも無い事を気付かれたと思い、苦悩します。物語は主人公が亡くなってしまう悲劇の結末に向かわざるえませんが、遺された者たちが少女との交流で成長する過程も描かれており、其の中でもクール・ビューティーな京子先生が秘めた熱き心を解き放ってゆく姿は印象的です。
かすみちゃんが亡くなった後で、京子先生は香川先生に「感情を剥き出しにする教師がムカつくのは、あたしにはマネ出来ないから」と心を開きます。そして物語は「かすみちゃんがいない運動会」で終ります。中盤で描かれた前年の運動会では車椅子姿で応援するかすみちゃんがいた場所に、もう彼女はいません。それでも、前年は本部席で佇んでいただけの京子先生が感情の赴くままに飛び出し綱引きに参加する姿に、確かにかすみちゃんが生きた日々が未来へ繋いだと感じられ、深い余韻を残します。
小学生の女の子が死んでしまわなければならない物語を観て「泣くな」と云うのは無理です。しかも実話を元にしているのですから、生半可な気持ちで作られたドラマでは在りません。子供が難病で動物も絡むとくれば、感動を強要する様な反則技とも云えます。此の作品も涙なくしては観れないのですが、片瀬クンが演じた京子先生を中心に観た時、彼女の人間的成長物語としての感動も得られます。実際にピアノを弾く姿や、結末での思いを爆発させるまでのじれったい葛藤を全身で表現する姿など、「那奈ヲタ」的な見どころも満載です。シリアスなドラマの助演でも「片瀬那奈は必ず一癖在るぞ」と思わせる演技が光った佳作と云えるでしょう。
「いのちのいろえんぴつ」INDEX
(小島藺子)