出演作:『きみにしか聞こえない』(ザナドゥー、他)
公開日:2007年6月16日
映像作品:DVD「きみにしか聞こえない」(メディアファクトリー ZMBJ-3631)
2007年12月7日発売
(撮影:2006年7月19日)
奇跡の初舞台と絶賛された「僕たちの好きだった革命」初演を終えた片瀬那奈は、撮影順で語れば、2007年11月に放映される「法廷荒らし 弁護士 猪狩文助」を撮り、7月期の連続ドラマ「地獄の沙汰もヨメ次第」へと向かいます。舞台を経験した前と後では、明らかに片瀬那奈の演技は変わりました。ゆえに、あたくしは女優回帰した2004年秋の「ラストクリスマス」から、2006年末に撮影された「らんぼう2」までを「第二期女優時代」と区切り、「僕たちの好きだった革命」初演の2007年2月からは「第三期女優時代」が始まったと考えています。
此の「きみにしか聞こえない」は、公開された順番では「僕たちの好きだった革命」初演の次に当たりますが、実際に撮影されたのは2006年の夏です。おそらく「DEATH NOTE the Last name」の撮影と同時進行で行われたと思われます。現在(2010年5月)絶賛公開中の「劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル」も今後公開を控える「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」や「ジーン・ワルツ」も、撮影は2010年1月期連ドラ「泣かないと決めた日」のクランクアップよりも前に終了しております。撮って出しとも云える連ドラと違い、本編は撮影から公開まで間が開くのです。ゆえに、此の作品での「原田リョウ」は「第二期女優時代」の演技です。
主演は「りこりこ」こと成海璃子ちゃん(片瀬クンと同じ研音所属で年齢は11才も下ですが、彼女のデビュウは5才なので芸歴年数は同じです)と、2009年から「ジョージア」の連続CMで共演する事になる小出恵介クンで、片瀬クンとの三人に荻島監督を加えた四人が初日舞台挨拶を行いました。ところが、片瀬クンにとっては主演二人と実際に顔を合わせるのが初めてとなった「不可思議な舞台挨拶」だったのです。其れが何故なのか?は、映画を御覧になって頂ければ解ります。
僕は片瀬那奈ちゃんが出演した映画の中では、此の作品が最も好きです。端役だった「冷静と情熱のあいだ」は論外ですし、エキストラ参加して「共に創った(主演の唐沢さんの名言)」と云う気分にさせてもらえた「20世紀少年」も、片瀬クンの出番が原作とは違って全く無くなっちゃったので「那奈ヲタ」的にはお話になりません。其れとは真逆に高田清美を原作以上に大フューチャーした「DEATH NOTE the Last name」や、最近観たばかりの「劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル」(杉尾園子は面白杉でしたけど、高瀬リコ様には及ばないナァ。)は、充分に及第点を超える出来映えとは云えます。でも、撮影がたったの二日(おそらく実写場面が壱日で、もう壱日はアフレコ)で、さほど出番が無い此の作品で演じた「原田リョウ」が最も心に遺りました。だから、舞台挨拶で荻島監督が「僕は原田という役がとても好きです」と語ったのは、とても嬉しかったです。片瀬クンも「後世に遺る作品に参加出来ました」と、自信たっぷりに挨拶してくれました。
物語の内容に関しては「ネタバレ上等!」で書き捲くっている此の連載では珍しく多くは語りません。僕はいつも通りに原作を読んでから観てストーリー展開を知っているがゆえの大きな感動を得ましたが、何も知らずに観て頂いた方が衝撃は大きいと思います。是非、未見の片は御覧になって下さい。泣けますよっ。シリアスで地味な役柄では「原田リョウ」が最も好きかもしれません。此の時点で、出番が多いとか主演だとかを超えた地点に片瀬那奈は来ています。其れが舞台を経験した後に、バイプレイヤーでの多彩で印象的な名演の数々へと繋がってゆきます。正しく、ギラリと光る助演を出来る様になりました。
えっと、そう云えば此の映画には「りこりこ演じる相原リョウの通う学校の山口先生役」で高田延彦さんが出演しております。小川、船木に続いて、またしてもプロレスが片瀬クンに擦り寄って参りました。今は亡き「ハッスル」でのノリノリな高田総統でお分かりの様に、高田はなかなか好い演技をしちゃってます。でも、其れは小川や船木がスットコドッコイ過ぎただけでして、決して高田が上手いわけじゃないのよさ。猪木も長州も映画に出ちゃってますけど、えっとですね、プロレスと演技は別ですからね。どんなに上手い役者だって、プロレスは出来ないじゃん。「相撲はお相撲さん、お相撲さんは相撲」なのだ。
でも、片瀬クンなら何でも出来そうなんだよナァ。
「きみにしか聞こえない」INDEX(小島藺子/姫川未亜)