nana.812.png

2010年05月16日

「怪優・片瀬那奈・進化論」
中入りの蛸:「2006」

片瀬那奈 2006年度 カレンダー


2006年は、片瀬那奈の女優歴に於いて余りにも芳醇な時でした。其の後も2010年の現在に至るまで片瀬は女優として更に大きく成長しますが、其の雛形は全て2006年に演じたと云っても過言ではないでしょう。

小早川妙子に始まり、山田バーバラ、高田清美、と連なった「オカルトもコメディもシリアスも何でも来い!」な「マンガ女優路線」に加え、初の時代劇や実在の人物役をもしっかりと演じ切り、其の積み重ねの上に爆裂しまくった「西豪寺エレナ様」に至った濃密な年でした。其ればかりか、片瀬は既に翌年に公開される「きみにしか聞こえない」の撮影も終えており、エレナ様の興奮が冷めやらぬ年末には「らんぼう2」の撮影に臨んでいたのです。CMも、クアトロ4ウーマン、ビューティーラボ、ポカリスエット・イオンウォーター、NTTドコモ関西キッズケータイ、と次々にに起用され、しっかりとファンと交流するトークショーや舞台挨拶も人並み以上に行っていました。恐るべき殺人的なスケジュール!立派過ぎますよっ、御本尊様。

どんな役柄でも演じられる稀有な女優として、片瀬那奈は引っ張りだこになって来たのです。那奈ちゃんに逢った事がある片になら説明不要でしょうけど、本当にマジでガチで「あんなに好い子はいないっ!」って断言出来る程に那奈ちゃんは素晴らしいんですよ。逢えば誰もが好きにならずにいられない素敵な人なのです。当然乍ら業界での評判も高いのでしょうし、オファーが殺到するのも宜なるかな、なのです。其の全てに真摯に取り組む姿は、美しいです。そんな最中に発せられた「結婚引退宣言」は、真面目な片瀬クンならではの本心でしょうが、多忙な女優業に加えて25才の誕生日を迎えた2006年11月7日には「So close, 7」を立ち上げデザイナーとしても活躍します。バラエティ番組での「おもしろいおねえさん」振りも好評を得て、10月からは「フェイク・オフ」の司会も担当していました。

うっかり結婚引退とか云ってられない立場に、片瀬那奈は祭り上げられていたのです。もうどうにもとまらないっ。ファンといたしましても「いつだってヤメたきゃヤメてもらって結構だ。那奈ちゃんがシアワセなら其れで好い。でも、ヤメられないでしょ?やっと此処まで来たんだもん。どーなのよさ?」と、もう気分は御本尊様と一蓮托生です。何せ、もう未亜たんとアンテツあにいは、此の年には遂にうっかり公衆の面前で正座して那奈ちゃんを拝んじゃったんですから、引っ込みが付きませんよっ。僕たちは此れまで何度も、那奈ちゃんの急激な変貌に驚き乍らも追わずに居れなかったのです。歌手に専念した時も、再び歌手から女優へと回帰した時も、振り落とされずに残ったじゃないか。片瀬那奈が今後も何をしようとも、挑み続ける覚悟はとっくに出来ていました。

2006年の大躍進劇は、繰り返しますが突然に降って湧いたのではなく、其れまでの長き片瀬クンの積み重ねが満を持して開花した成果です。2006年10月30日、西豪寺エレナ様に歓喜し、楓や高田清美を待っていた時に、来るべき2007年に片瀬那奈が初舞台に挑むと公表されます。鴻上尚史さん演出の「僕たちの好きだった革命」でヒロインを演じると報じられ、既に稽古に入っているとも書かれていました。鴻上さんは「ナナは初舞台だが、俺は歌手でステージに立っているのを観て舞台度胸を知っているから心配してないっ(キリッ!)」と断言しました。片瀬那奈が歌手活動に賭けた日々は、決して無駄ではなかった。そして、西豪寺エレナ様が片瀬那奈の頂点でもなかった。

物語は、未だ始まったばかりだったのです。


(小島藺子/姫川未亜)


posted by 栗 at 01:07| ERENA | 更新情報をチェックする

「怪優・片瀬那奈・進化論」
act 026「西豪寺エレナ様」

鉄板少女アカネ!! DVD-BOX


 出演作:『鉄板少女アカネ!!』全9話(TBS系)
 放映日:2006年10月15日〜12月10日(毎週日曜日 21:00〜21:54、初回10分拡大版)
     平均視聴率 8.8%

 映像作品:DVD「鉄板少女アカネ!! DVD BOX」
      (ハピネット・ピクチャーズ BBBJ-9234)2007年3月23日発売

 (撮影:2006年9月14日〜12月5日)


此の連載のカテゴリ・タイトルが「エレナ」である事実でお分かりに通り、此の「日曜劇場」で史上初の一桁数字を叩き出し打ち切りの憂き目に逢ってしまった「鉄板少女アカネ!!」で片瀬那奈が演じた「西豪寺エレナ様」こそが、「怪優・片瀬那奈」を決定付けた記念碑的なキャラクターです。そして、此の世紀の当たり役は、もしかしたら存在しなかったかもしれなかったのです。千載一遇のチャンスを、見事に片瀬那奈はモノにしやがりました。此の作品が無ければ、後の「美月うらら姫」も「高瀬リコ様」も居なかったかもしれません。

何ゆえ、こんなにも面白い「西豪寺エレナ様」が打ち切られなければならなかったのでしょう。「世界バレーボール」中継の延長で放送時間が余りにも不安定だったからでしょうか?はたまた老舗の「日曜劇場」枠にはマッチしない破天荒な内容だったからでしょうか?片瀬クンが「信長の棺」の放送と見事にバッティングしたばかりでなく陣内さんもバッティングする等の「普通なら考えられない」事態が続いた事実からも、何らかの裏事情は感じられます。ま、そんな「片瀬那奈マネ日記」みたいな裏話は「此処の本分」でも「武士の一分」でもありません。ま、此の面白さが分らない片には「おまいは呑気に華麗なる月9でも観てろ!」と云うしかないです。いえ、別に他意はないです。

さて、「鉄板少女アカネ!!」は、またしても原作が漫画でした。「那奈ちゃん、全部マンガだよ、片瀬クン」と「マンガ女優道」を邁進して来た片瀬那奈ですが、此の「西豪寺エレナ様」は「高田清美」など比較にならない程に「片瀬那奈のオリジナル」になりました。何しろ、原作での「西豪寺エレナ様」は僅か二話に登場するだけの端役なのです。他の設定も原作とは全く違っていますが、「西豪寺エレナ様」が堂々とメインでアカネのライバルとして君臨するのが最も大きな違いでしょう。

つまり、片瀬那奈は自ら「西豪寺エレナ様」と云うキャラクラーを創造したのです。其の暴走度は回を重ねるごとに歯止めが効かなくなってしまい、完全に主役のミクロちゃんも並みいる俳優陣も食いまくってしまいました。一体、何が此処まで片瀬クンを弾けさせているのか?と我が目を疑う程に熱狂し爆笑しまくったものです。秘書の北村(デビット伊東さん)と鳴海(大友みなみさん)とのトリオも楽しく、其の三人コントは現在の「高瀬リコ様」でも継承されています。

此の作品では、オープニング・ナレーションを秀島史香さんが担当しているのも、未亜たん&うっぴー☆にとっては嬉しかったです。そう云えば「ふみか、かわいいよ、ふみか」は、先日(2010年5月5日)に御結婚なされたそうで、おめでとうございます。「ふみか、ひとづまだよ、ふみか」になっても、可愛い声は不滅です。

さて、ドラマ版でのストーリーを何となく振り返りましょう。物語は、母を亡くし父も失踪し17才でお好み焼き屋「ちゆき」を切り盛りする「神楽アカネ(ミクロちゃんこと堀北真希ちゃん)」が「父・鉄馬」の多額の借金(那奈千万円!)を理由に立ち退きを命じられるエピソードから始まります。其れは、鉄馬を東京フードパークの鉄板部門に料理長として迎える条件を「美食王・嵐山(竜雷太さん)」に突きつけられた西豪寺グループの若き女社長「西豪寺エレナ様」の策略でした。ダイビング土下座までやらかし店を守ろうとするアカネを見た嵐山は、アカネの負った借金を肩代わりする代わりに「三ヶ月後に鉄馬を超える豚玉を焼けっ!」と分けが分からない事をぬかします。天下無敵のエレナ様も、何故か嵐山の命令には逆らえない御様子です。アカネの初恋の人「心太(塚本高史くん)」や謎の男「黒金(陣内孝則さん)」と共に、全国各地から鉄馬の名前で送られてくる食材を頼りに修行の旅に出るアカネと、どーゆーわけか西豪寺エレナ様は行く先々で必ず遭遇し、料理勝負を繰り広げるのでした。

「熱くて悪いかっ!」と健気に対戦するミクロちゃんがエレナ様の手下どもを次々と打ち負かしてゆくのですが、800億円もの大金を事業に投資したエレナ様は、アカネを知り尽くす心太を対戦相手にスカウトしアカネを追い詰めます。其れを画策した黒幕でも在り乍ら「勝負に勝った方にしか、鉄馬には逢わせないっ!」等と理不尽な事を云い出した嵐山は、なな、なんと鉄馬の父親でアカネの祖父だったのですっ。しかも、鉄馬は既に死んでいましたっ。正に「ええぇ〜〜っ!」(ミクロちゃん声で)ですよ。存在しない鉄馬を探せと云われ、多額の投資をしたエレナ様は茫然自失です。嵐山は最後の対戦相手に、実は鉄馬のライバルだった黒金を用意していました。何もかもが、嵐山のエゴだったのかっ。恐るべし、美食王!てか、何で只の「食い道楽じじい」がそんなに偉いのよさ、、、。

しかし!流石は西豪寺エレナ様です。宿敵ミクロちゃんの情に訴える「掟破りの逆土下座」でまんまとミクロちゃんを懐柔し味方に引き込み、黒金との対戦もちゃっかりプロデュースして、屈辱を与えられた嵐山&黒金をミクロちゃんとの共闘で打ち破り、フードパークも成功に導くのでした。めでたしめでたし、、、。と大雑把に振り返っても「なんじゃこりゃ」と云うしかない荒唐無稽なお話です。特に終盤の「嵐山はアカネの祖父でした」とか「鉄馬は死んでました」とか「心太も黒金も嵐山の手先でした」とか、もう投げっ放しの打ち切りスープレックスが連発される展開には目眩がしました。もう此の際だから「アカネとエレナ様は生き別れた姉妹だったのだ!」とか云われても驚かない程に「どーにでもして頂戴」な、スットコドッコイ脚本じゃまいか。

最初の内は「エレナ様が金にモノを云わせたフードパーク店舗を進出させ、閉店の危機にある老舗料理店をミクロちゃんが救う」と必然性があった勝負も、後半には「病気で死にかけた松茸ババアの跡継ぎを決める為に二人の息子に代わってエレナ様とミクロちゃんが対決するものの、松茸ババアは仮病で、エレナ様は呆れ返って試合放棄」などと破綻しまくり、最早「勝負の為の勝負」へと転げ落ちてゆきます。イコちゃん的には大好物な物件ですけど、「平均 8.8%」で「打ち切り」は世間一般常識的視点からなら当然でしょう。此れが20%とか超える世界だったら、あたくしはもう「ゼンキロ」なんか書かなくてええわけだ。2010年の現在でも「プロ花」第五話は「3.9%」だったのよさ。あんなに面白いのにね。「数字じゃないっ♪」と歌いたいっ。

そんな出鱈目な世界でも、片瀬那奈は踏ん張ったのです。最終回の決戦では何故か髪をピンクに染めておりますが、直前の番宣で「王様のブランチ」に出演し「何故、ピンクきのこ頭なのよさ?」と訊かれた片瀬クンは「もう、このくらいやらないと誰も観てくれないと思いまして」と云い放ちました。其の恐るべき女優魂に「朝に逢った時にはエレナ様は金髪だったんですけど、本番になったらピンクになってたんですよ」と明かしたミクロちゃんも、大きな目をパチクリさせつつ絶句しておりましたよっ。此の命懸けとも云える怪演には、世間も「片瀬那奈って、何なのよ?」と注目せずにおれなくなったのでした。正直に申しますと、あたくしは此の「西豪寺エレナ様」が永遠に片瀬那奈の最高傑作になると思っていました。ところが、其の予想は次々に覆されてゆくのです。今振り返れば「西豪寺エレナ様」は、正に「怪優開眼」の時でした。


(小島藺子/姫川未亜)


posted by 栗 at 00:07| ERENA | 更新情報をチェックする