出演作:『ビバ!山田バーバラ』全2話(テレビ朝日系)
放映日:2006年6月30日〜7月7日(毎週金曜日 23:15〜24:10)
「小早川妙子の変」に続いて、2006年の片瀬那奈は二本の映画(後に詳述)の撮影と同時進行で主演ドラマに挑みました。其れは前年に主演した「香港バタフライ」と「いい男はマーケティングで見つかる」では燻っていた片瀬クンの真価がようやく炸裂した作品となります。原作は鈴木由美子さんの同名漫画で、正に「マンガ女優・片瀬那奈」の快進撃が始まるのです。
片瀬クンが演じた山田バーバラは、かつてはトップモデルだったものの42才になった現在は太ったオバさんに成り果てています。人生に疲れコンビニの冷蔵庫で凍死自殺を試みたところ20代の若かりしスタイル抜群の美人時代に戻ってしまい、再びブイブイいわせようとしますが、水に濡れると元のオバさんに還ると判明します。若いバーバラで純クン(内田朝陽クン)に積極果敢にアタックするバーバラでしたが純クンの父親が元カレ・天(杉本哲太さん)と分り、冷蔵庫で変身を繰り返しては濡れて元に戻る二重恋愛ドタバタ喜劇を繰り広げるのでした。原作では「ふしぎなメルモ」さながらに焦ってうっかり10才の少女になったりもしますが、ドラマでは其処までは描かれず結末も違っています。
オバさんになったバーバラを中島唄子さんが演じ、若いバーバラを片瀬クンが演じる「二人一役」ですが、バーバラの心象を吐露する全体のナレーションも片瀬クンが担当しています。海に入り太ってしまう場面では下半身だけ肥大化する特殊メイクを披露したり、内面が42才のオバさんゆえの過激な台詞や大胆な行動も厭わず演じ切り、其の後のコメディエンヌ路線を決定付ける基点となった作品でした。ようやく主演作でも「片瀬那奈、此処にあり」を大いに印象付ける艶姿です。マブダチ星村麻衣クンがエステシャン役で「うっかり女優デビュウ」していたりもしますが、何故か長州小力を始めとする「西口プロレス」の面々が多数出演しております。何で毎度毎度、片瀬クンにはプロレスが擦り寄ってくるのよさ。
単なる美人女優の一人と認識していた世間一般の方々には、2006年の片瀬那奈は大きく変貌したと映ったかもしれません。でも第一期女優時代から片瀬那奈を愛したファンにとっては、此の路線での爆裂は正しく待望していた事でした。「片瀬クンはやる時はやるのだ」と、遂に其の眞なる姿を魅せてくれたと、拍手喝采大絶賛となりました。此の作品の前編がオンエアされた翌日の2006年7月1日に、映画「デスノート完結篇」への出演が公表されます。「おおっ!銀幕でも那奈ちゃんが大活躍かっ」と盛り上がり、翌7月2日に名古屋で行われたトークショーに駆けつけた流星ブラッドベリーズ(未亜&うっぴー☆)に、片瀬那奈は無情にも「結婚引退宣言」を云い放ちます。「結婚したら仕事はヤメます!」とハッキリと明言したのです。「片瀬那奈24才、最後の暴走!」と考えれば、なるほど2006年前半の躍進は納得がゆく展開でした。「ならば良し、其の輝きをしっかりと最後まで見届けよう」と、僕たちは誓ったのでした。
が、未だ未だこんなもんじゃなかった。怪優・片瀬那奈は其の正体を垣間見せたに過ぎなかったのだと、怒涛の2006年後半に僕たちは思い知らされるのです。
(小島藺子/姫川未亜)