昔、20代の頃に、最も欲しかったレコードは THE BEACH BOYS の「SMiLE」でした。
あたくしは1960年生まれなので、中学生の時にもう解散して居た「THE BEATLES」に出逢いました。所謂ひとつの「赤盤青盤(1973年発売)」が出たので、ラジオで彼等の曲をかけたのです。具体的に云えば、以前も書きましたが、鈴木ヒロミツさんと岡崎友紀さんがやってらした番組で初めて「THE BEATLES」を聴いたのです。其れで、僕の人生は変わりました。だって、其の時の僕は13才だったんです。
其れからは「洋楽一直線!」で「ロックの人」になってゆく青春時代を送ります。僕が英米文学部に進学したのだって、別に英語の成績が飛び抜けてよかったからではないのです。高校の文化祭でバンドでビートルズを歌ったら、其れをうっかり聴いた英語教諭に呼び出されたのです。英語の先生はこう云いました。「お前、英語の成績は大した事ないのに、何であんなに発音が完璧なんだ?お前が歌ってるの、聴いたんだよ。ハッキリ云って、ネイティヴ並みだ。俺よりも上手く話せる」褒められると嬉しいから、うっかり大学は英米文学科にしちゃったのよさ。でも、其れは単にあたくしがビートルズとかの洋楽にハマって、コピーしてただけなんです。
そんなこんなで学生時代には、正規盤も好いけど海賊盤が欲しいって事になりました。ビートルズの海賊盤はわりと入手可能だったのだけど、1980年代前半にはビーチ・ボーイズなんて山下達郎しか騒いでない存在だったのです。正規盤すら、ほとんど手に入らない状況でした。其れでも何枚か手に入れて「SMiLE」ってトンデモな幻の作品が存在するって事実を知ったのです。
確か、1984年頃だったと思うのですが、当時住んで居た仙台の輸入盤屋サンで、僕は「SMiLE」をみつけました。二枚組で八千円位の値段が付いて居たと思います。手が届かない!って価格でした。其れから四半世紀が経ちました。其の後、CDで「SMiLE」を何枚も買いました。ブライアン自身も2004年に正規盤として発表しました。でも、2004年の其れは、僕が欲しかった「SMiLE」じゃなかった。
僕が愛する「SMiLE」を、音源的にはCDで持って居るのだけど、今日うっかり中古盤でレコードを発見したのです。たったの「840円」で投げ売りされて居た愛しの「SMiLE」を、僕は迷わず購入しました。そして、今、針を落として聴いて居ます。音源なら、もっと良いのを持ってます。でもでも、此れで聴きたかった。
そう、此れは欲しくても買えなかった青春時代への「リベンジ」なのです。
そんでもって、えっと、まぁ、此れが「必殺カタセ固め」って技なのよさ。
(小島藺子)