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2009年12月04日

「夢みる歌謡曲」第那奈章: 片瀬那奈がきこえる
#084:「TANGO NOIR」

EXTENDED(初回)(CCCD)(DVD付) EXTENDED (CCCD) TANGO NOIR


 作詞:冬杜花代子
 作曲:都志見 隆
 編曲:CMJK

 オリジナル:中森明菜(1987年、オリコン1位、年間2位)

 品番:AVCD-17426/B、AVCD-17427(ミニアルバム「Extended」03)

 発売日:2004年4月21日(オリコン最高24位)


「Extended」は那奈曲入りのカヴァー・ミニアルバムですから、此の三曲目で早くも前半が終わり中盤となるわけです。そこで登場するのが、なな、なんとまたしても中森明菜のカヴァー「TANGO NOIR」とは驚きでした。

たった那奈曲の中で明菜が二曲!此れは、解せません。特に片瀬が「明菜ファン」で望んだ結果とも思えませんし、折角のカヴァー企画なのですからより多くの違うタイプの歌手や楽曲を選んで「片瀬風」にアレンジすべきでしょう。「ミ・アモーレ」は未だ好かったのですが、此のカヴァーは無謀だったと思います。片瀬は全く歌いこなせてないし、原曲とは比較する事すら失礼な「駄作カヴァーの見本」です。

「淋しい熱帯魚」では効果的だった「CMJK」のアレンジも、此処では過剰でヘッドフォンで聴くと余りのノイジーさに苦痛すら感じます。実際にサイレン音の様なSEが鳴り響いていて、余り幸せな気持ちにはならない音楽です。「Extended」の前半三曲は全てが暗いテーマの楽曲ですが、其の不安感や不吉なムードは此の「TANGO NOIR」で頂点に達します。オリジナルの明菜による作品自体が情念が込められたヘビーな楽曲で、およそ通常のアイドル歌謡曲の範疇で語れない様な不気味な怪作ヒットだと思えます。当時の明菜は、1985年と1986年の二年連続レコード大賞を獲得した全盛期で、既にアイドルと呼ぶには些か戸惑う存在でした。なにせ、其の頃って「おニャン子全盛期」でも在ったわけですからね。更に云えば「TANGO NOIR」は 1987年度の年間2位に輝いた代表曲ですが、当時はレコード業界が不況で売り上げは35万枚位だったのです。ちなみに1987年の年間1位は瀬川瑛子サンの「命くれない」で、42万3千枚。'80年代で最低の業界大不況年だったのでした。

おそらく、此れも片瀬の意志とは無関係のカヴァーだったのでしょう。明菜が二曲って時点で何らかの事情が見え隠れしますし、片瀬の歌唱も全く空虚で、煩い演奏に字面を追った様な「カラオケ那奈ちゃん」が乗せられただけです。こんな歌い方では、赤ら様に「此の曲は知りません」と白状しちゃっているのと変わりません。

発表当時に初めて聴いた僕は、此処までの三曲で頭を抱えてしまいました。「な、なんじゃこりゃ、酷い出来だ!片瀬、おわった、、、」と呆然となりました。アルバム「TELEPATHY」と次の「Necessary / EVERY***」で魅せた片瀬那奈は、一体何処へ行ったのでしょう?中森明菜のカヴァーを二曲って、一体誰が望んだのでしょう?しかも「TANGO NOIR」って、どーゆー思考回路から出て来る発想なのでしょうか?「ギャップを狙った」って、あのね、物事には程ってモンが在るのですよ。

大いなる選曲ミスで、最悪の「禁断のテレパシー」に匹敵する「完全なる大失敗作」と断じます。「禁断のテレパシー」よりも未だマシだと云えるのは、此の曲が単なるアルバムの埋め合わせ曲に過ぎず、実演では壱度も披露されなかったからです。楽曲の傾向からして、その頓珍漢な二曲を選曲したのは同一人物だと思われますが「貴方は片瀬を全く分ってない」と面と向かって云いたいです。只、当時、中森明菜サン本人が「片瀬が二曲もカヴァーした事に対して好意的なコメントをして下さった」事は、とても嬉しかったです。


(小島藺子)


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「夢みる歌謡曲」第那奈章: 片瀬那奈がきこえる
#083:「淋しい熱帯魚」

EXTENDED(初回)(CCCD)(DVD付) EXTENDED (CCCD) Diary


 作詞:及川眠子
 作曲:尾関昌也
 編曲:CMJK

 オリジナル:Wink(1989年、オリコン1位、レコード大賞受賞)

 品番:AVCD-17426/B、AVCD-17427(ミニアルバム「Extended」02)

 発売日:2004年4月21日(オリコン最高24位)


二曲目に登場するのは、「ミ・アモーレ」同様にレコード大賞を受賞した「Wink」の代表曲「淋しい熱帯魚」です。あまりにも有名な楽曲を連発して来ました。

アレンジを担当したのは元「電気グルーブ」の「CMJK(北川潤)」で、彼は次の「TANGO NOIR」の編曲(クレジットはないが、両曲共にプログラミングも彼だと思われる)も担当していてアルバム前半に大いに貢献しています。日本のテクノ・シーンの先駆者で在る彼の手腕は、特に元々が「和製ユーロビート歌謡」だった此の楽曲では見事に活かされていると思います。

片瀬自身も積極的にカヴァーしようと望んだ楽曲だった様で、原曲がデュエット(ま、ほとんどユニゾンですが)の曲を敢えてソロ中心の歌唱で意欲的に挑戦しています。アルバム発表後の実演でも定番メニューとなりましたし、後にバラエティー番組で相田翔子サンと共演した際には「子供の時からファンで、カヴァーもさせていただきました」と挨拶していましたので、かなり思い入れがある曲だったのでしょう。(余談ですが、片瀬は女優らしく「コトノハを聴き取れる様に丁寧に歌う」ので、此のカヴァーを聴いて初めて「ハート・オン・ウェーヴ」と云う歌詞だと分りました。オリジナルを聴いてて、ずっと「はろーえ〜」って何だべさ?と思っていたのよさ。)

されど、世の中には好意的な方々だけが存在するのでは無いのです。作詞を担当した及川先生は、同時期に同じく此の曲をカヴァーした「W(辻ちゃん&加護ちゃん)」と片瀬の双方を聴き「アレンジが酷い!船山基紀は偉大だ!」と感情的に怒り一刀両断しました。彼女の意見に代表される様に、カヴァーとは原曲と比較される運命に在り、特に原曲に愛着を持つ者からは厳しい目で見られるのです。

個人的には、片瀬のカヴァー企画の中では未だ出来が好い方だと思います。片瀬は正直なので、カヴァー企画では出来不出来がハッキリしています。「情感を込めて歌っているか、楽譜をなぞって平坦に流しているか」の違いで完成度が違うのです。簡単に云えば「自分が望んでカヴァーしたか、スタッフに歌わされたか」が明確に分ってしまう程に「歌唱の差」が在ります。たった那奈曲なのですから、片瀬主導で選曲させればもう少しはマシになったでしょう。そもそもカヴァー企画は、歌い手が原曲を愛していなければ基本的に成立しません。片瀬が聴いた事もない楽曲を選曲し歌わせたスタッフは、音楽を愚弄していますよ。

和製カイリーと称された片瀬那奈が「其のカイリーがユーロビートのアイドル時代に放ったヒット曲を翻訳した Wink を、21世紀型カイリーのアレンジでカヴァーする」と云う輪廻転生的なカヴァーとしても「淋しい熱帯魚」は捉える事が出来ます。そんな意味でも意義のある作品ですが、気になるのは矢張り「詩」です。先行シングルの二曲も、此の楽曲も「ネガティブで弱い女の子」の歌なのです。其れが1980年代の女性アイドル的な世界観でした。2004年では明らかに時代錯誤ですし、特に一貫して前向きな歌を歌い続けて来た片瀬には全く似合わないと思えてなりません。そもそもあたくしはカヴァー企画自体が気に入らないのでナンダカンダと文句を云ってますけど、実演で此の曲を歌う片瀬は「可愛らしかった」と正直に云いましょう。此れと「C-Girl」の実演は、萌えました。


(小島藺子)



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