片瀬那奈のシングルは、第四弾予定だった「タイトル未定」から明らかな迷走を繰り返します。結果的には「Necessary / EVERY***」として世に出た作品の経緯に関しては既に書きましたが、カヴァー路線に向かい結果的に最後のシングルとなった「禁断のテレパシー」にも紆余曲折があったと思われます。
3月10日発売の「ミ・アモーレ」に続いて、1980年代アイドル歌謡のカヴァーでもう壱枚シングルを間髪入れずに3月31日発売し、更にカヴァー・アルバムを4月21日にリリースすると云う怒涛の展開は年明けから予告されていました。「ミ・アモーレ」に関しては発売よりも一ヶ月以上も前から実演でも披露されていましたので確定だったのですが、他の楽曲に関しては情報が交錯します。
此の「赤道小町ドキッ」は、山下久美子サンが1982年に放った大ヒット曲(オリコン最高位2位)で、作詞/作曲は松本隆/細野晴臣の「元・はっぴいえんど」です。と云うよりも当時大ブームだった「YMO」系のテクノ歌謡の代表曲と云った方が好いでしょう。何故此の作品を取り上げるかと云えば、一部の音楽サイトやCD店の店頭POPで「片瀬那奈カヴァー第二弾!赤道小町ドキッ」と堂々と告知されたからなのです。
片瀬音源で幻とされるのは、正式告知があった「タイトル未定(AVCD-30494)」と此の「赤道小町ドキッ」です。片瀬那奈のカヴァー路線は結果的には「Extended」として那奈曲入りのミニアルバムで発売されますが、常識的に考えて那奈曲しか候補曲が無かったとは思えませんし、実際に多くの楽曲が録音までされて選曲されたとするのが自然です。全く其の存在を明かされていない候補曲まで踏み込む事は不可能ですが、此の楽曲の様に正式告知があった作品は考察すべき物件でしょう。
残念乍ら、片瀬那奈による「赤道小町ドキッ」は告知のみしか未だに存在が確認出来ません。正に「幻のカヴァー曲」として語り継がれる「謎の音源」です。確かに告知があったと云う事実は「最終候補曲」として残った楽曲だったと想像させます。では、何故お蔵入りになったのか?勝手に想像すると「同じくカネボーCM曲だった『Rock’n Rouge』と『C-Girl』もカヴァーするのに三曲じゃ、赤ら様過ぎるだろ?松本の作品も被るし、元々テクノな楽曲じゃカタセ式なアレンジも目立たない。其れに、山下久美子はアイドル歌謡じゃないじゃん」とか色々とあったのかもしれませんね。
問題は、またしても制作上の迷いが露呈してしまった事でした。今にして思えば、2004年初頭には既に水面下では着々と「女優復帰」が画策されていたのでしょう。「歌手・片瀬那奈」は、最終局面に立っていたのです。
(小島藺子)