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2009年11月03日

「夢みる歌謡曲」第那奈章: 片瀬那奈がきこえる
#061:「THE WINGS LIVE in velfarre」

Necessary/EVERY***(初回限定盤)(CCCD)(DVD付)


 Lyrics:kenko-p
 Music:DAMON MEEKS AND BOB MENDELLSON
 Arrangement:Sadahiro Nakano

 品番:AVCD-30532/B

 実演日:2003年7月5日

 発売日:2003年10月16日


「FANTASY」に続いて「Necessary / EVERY***」の初回盤付属DVDには、2003年7月5日@六本木Velfarre 「TELEPATHY WITH YOU」から「The Wings」の実演映像が収録されました。後の『RELOADED 〜Perfect Visuals〜』にも「The Wings」の映像は収められますが其れは別の実演からですので、此の映像は此処でしか観れません。

「TELEPATHY WITH YOU」は片瀬にとって最初期のフルサイズ実演でした。歌手転向時には二曲(「GALAXY」「TELEPATHY」)のみの実演でサプライズ降臨するのが定番スタイルだった片瀬が、初めてフルサイズ実演を行ったのは2003年5月3日の広島フラワーフェスティバルです。其れから再びミニサイズ実演に戻り二ヶ月後に二度目に行ったフルサイズ実演「TELEPATHY WITH YOU」@六本木Velfarre からの映像ですので、片瀬のパフォーマンスからは最初期ならではの緊張感が伝わります。

歌手転向時のインタビューで「目標は単独ライブ。ステージではお芝居も取り入れたい」と語った片瀬の念願が叶った「TELEPATHY WITH YOU」では、本人が目指した「演劇性も在るパフォーマンス」が過剰に表現されてもいました。此処に収められた「The Wings」の最初期実演映像は、そんな片瀬の健気な志を観る者に知らしめます。

歌詞に合わせた振り付けで男性二名女性二名のダンサーと踊る片瀬ですが、其の表情にも注目して下さい。其処にはパントマイムをも思わせる程に過剰な表情による演劇的な表現が観れます。あたくしは此の日の実演を「最前列左側の片瀬の立ち位置の真下」から見上げていました。銀のレザー姿で登場し、過剰な表情やダンスでフルサイズ実演を行った片瀬を観て想起したのは、カイリー・ミノーグでは無く、其のカイリーのお手本のマドンナでも無かった。あたくしが思い出したのは、其のマドンナが敬愛し影響を受けたケイト・ブッシュでした。2003年の片瀬那奈は、あたくしの心の中で1978年〜1981年の「THE DREAMING」以前の初期「ケイト・ブッシュ」と重なったのです。

「レザー姿で長い髪のスタイル抜群の美人がパントマイム風な演劇的な音楽パフォーマンスを行う」と云うスタイルの元祖はケイト・ブッシュです。ケイトは、あたくしが10代の頃のアイドルのひとりで在り、おそらく其れ以前も以後も含めての半世紀近い生涯で最も衝撃を受けた「天才少女」でした。「理想型アニマ人格」である「小島藺子」の実在の人間での最初期モデルが、彼女です。勿論、片瀬自身は自分が生まれた頃に活躍していたケイトの若い時代を意識などしていなかったでしょう。片瀬が意識したのは其の次のマドンナでしょうし、スタッフは更に其のまた次のカイリーをお手本としたのだと思います。然し乍ら、其処に現れたのは「元祖・ケイト・ブッシュ」でした。此の「先祖帰り現象」は、片瀬が無意識に芸術の本質を理解している事の証明となるでしょう。

新たなる芸術表現を目指す時に、表現者は「原点回帰」します。多くの芸術家がアフリカへ目を向ける時が在る様に、更には「新たなるプロレス」と謳われた「UWF」が決して派手な大技を連発するサーカスでは無く「新日の道場で行われていた練習から発展させたスタイル」だった様に、片瀬那奈が目指した新たなる音楽表現の模索は、彼女を無意識の「原点回帰」へと導きました。其の片瀬那奈の「論理を超えた感性」に、あたくしはシビレた。片瀬は努力家ですが、実は「天才」でした。其の容姿が天性の才だっただけでは無く、彼女の思考が「天才」で在る事実に、歓喜しました。あたくしは、遂に見つけたのだよ「理想化した現実」を。出逢えるはずが無い空想上の存在が、出現したのです。

ま、当時「おい!片瀬は現代に蘇ったケイト・ブッシュだぞ」等と洋楽仲間に興奮して捲し立てるあたくしのコトノハに共感する者は、皆無でした。「片瀬がやったのは『ひとり GET BACK』だぞ、片瀬はビートルズとおんなじじゃん!」との意見は、鼻で笑われただけでした。だからあたくしは「月刊・未亜」を始めた。其れは「COPY CONTROL」となり、此処へ行き着くのです。片瀬那奈は、あたくしを少年時代に戻してしまった。此の映像に収められた日の実演を観た時、「全ては此処へ繋がっていた」と確信した。歌い踊る片瀬那奈を見上げ乍ら、「片瀬那奈の語り部になろう」と決意しました。あたくしは只、其れを継続しているだけです。


(小島藺子/姫川未亜)



posted by 栗 at 00:07| YUMEKAYO | 更新情報をチェックする