Lyrics:NANA KATASE
Music:Patric Johansson & Linus Norden
Arrangement:Yasuo Kimoto
Mix:Dave Ford
Programming:Yasuo Kimoto
Chorus:Junko Hirotani
品番:AVCD-17291/B、AVCD-17292(アルバム「TELEPATHY」02)
発売日:2003年6月25日(オリコン最高位17位)
二曲目は、タイトル・トラックとなった「TELEPATHY」です。音源的にはシングルと同一だと思われますが、シングルは「4'00''」でアルバムは「3'57''」と表示されます。此の「3'57''」は、実はラフミックスだったプロモ盤の「TELEPATHY」と同じタイムなのです。つまり、アルバムでの「TELEPATHY」は公式シングル盤と同一テイクで在りながら、時間は「三秒も短い」ラフミックスと同じに戻っているのでした。(ちなみに「Reloaded」でのタイムは「3'59''」です。)
シングルでは「GALAXY」〜「TELEPATHY」の流れだったのに、アルバムでは逆になっています。四曲目には「TELEPATHY」の続編的な詩作曲「Deep Forest」が繋がりますので、敢えて間に「GALAXY」を持って来る事には意味が在るのでしょう。
タイトル曲だからイントロダクションとしての「Change this World」の次にメイン・テーマとして「TELEPATHY」を提示するのは自然な流れです。片瀬自身の解説でも「まずテーマとして、TELEPATHY が在った」と明言されましたし、詩を発想したのが「広島へ内山理名と旅した時」で、「Deep Forest」も同じ経験から生まれた事も語られています。其の間に「GALAXY」をわざわざシングルとは逆順で挟み込んだ事で、世界観が大きく広がりました。
例えば、Dave Ford による冒頭三曲の統一感が在るミックスでの流れだけを意識して並べるなら「Change this World」〜「GALAXY」〜「TELEPATHY」で好かったわけです。シングルで聴き慣れた「GALAXY」〜「TELEPATHY」から「TELEPATHY」の続編「Deep Forest」でも全く問題は在りませんし、寧ろ自然だったでしょう。片瀬は敢えて「緩急」を付ける為に曲順を逆転し、更に同一テーマ曲を繋げずに間に別世界「GALAXY」を挿入する事で「全ては、同じテーマ」と示したのです。此の流れは見事です。「Deep Forest」の次には「Shine」が繋がり(何度も云いますが、此処までが「A面」です)、「Babe」へと向かいます。アルバムの半分までで先行シングルで発売された「タイトル・チューン全4曲」を惜しげも無く収録してしまったのです。前半だけなら「ベスト盤」とすら思える様な選曲なのですが、其れが「アルバムならではの展開」になっているのが素晴らしいのですよ。
其れは「TELEPATHY SESSIONS」に於ける楽曲が明確にひとつのテーマで制作され、しかも個々の楽曲も独立したヒット曲にも成り得た事実を示しています。アルバム「TELEPATHY」は傑作に成る可くして成ったのです。何故なら、片瀬は最初から此の流れを構想し制作しており、其のセッションで創られた楽曲を先行シングルとして個々に公表しヒットさせ、満を持して其れらを含む全貌を明らかにしたからです。
つまり「最初にアルバム在りき」で、其の中から怒涛の連続リリースで先行シングルとして数曲を発表したのです。当初からアルバム「TELEPATHY」が構想されていたのですから、本来なら第壱弾シングルと同時にアルバムを発表してから第二弾、第三弾のシングル・カットとなるでしょう。まして片瀬は歌手としては新人だったのですから「シングル三連続リリース」から「アルバム」へとの流れは、期待度が大き過ぎます。其れだけ「TELEPATHY SESSIONS」は実りが多く、スタッフも自信を持っていたのでしょう。其の大きな期待に、片瀬は応えました。
繰り返しますが、片瀬那奈は最初から「TELEPATHY」をメイン・テーマと発想し、其の後へ繋いで行ったのです。「トータル・アルバムを制作する」と考えて音楽活動を始めたのですよ。そんな新人歌手って、なかなか居ないよ。あたくしが知る限りで、いきなりそんな事をやらかしたのは、例えばジョン・レノン「ジョンの魂」とか、ジョージ・ハリスン「ALL THINGS MUST PASS」とか、ブライアン・ウイルソン「PET SOUNDS(名儀はビーチ・ボーイズだけど、アレはソロです)」とかで、つまり彼等はバンドを離れて「個人のトータル・アルバム」へと向かったのです。片瀬の場合は「第一期女優時代」がバンドだったのかもしれません。
「TELEPATHY」は、アルバムで聴くと印象が大きく変わります。其れは他のシングル曲にも云える事です。其れは、物凄い事なんですよ。「シングル曲がアルバムの流れにキチンと乗る」なんて、数多在る音楽家の何人も目指す「理想型」なんです。其れを、片瀬は歌手転向第壱弾で「うっかり成し遂げてしまった」のでした。片瀬那奈が音楽を始めた意味は、其の事実だけで、大いに在り過ぎます。
(小島藺子)