nana.812.png

2009年08月11日

「片瀬音楽待望論」ユメカヨ・特別篇

TELEPATHY(初回)(CCCD)(DVD付)


二週間位前に、僕は生まれて初めて「携帯mp3プレイヤー」を購入しました。昔はウォークマンやディスクマンを持っていたのだけど、そもそも「音楽を聴くのは実演か部屋で、向き合ってガチンコで」って古い嗜好性なものですから、iPod等で持ち歩いて外界の音を遮断するってのが苦手です。僕は日常生活では会社も近くなので電車にはほとんど乗らず「片瀬の街」近隣を徒歩か自転車で移動していますので、特に自転車に乗っている時に通行人や自転車、バイク、下手すれば自動車を運転しながらヘッドフォンをしている方々を見ると「此の人たちは、死にたいのかしら?危険がアブナイなぁ」と思わずにおれないのです。携帯を持たないのもおんなじで、他人が歩き乍らとか運転し乍ら電話したり画面を見ているのを見て「おいおい、事故が起きても文句云えないじゃん」と思うからなのです。犬や猫の方が、よっぽどまわりを見ていますよ。

其れに遠足に行く時にはノートパソコンを必ず持参するので、iTunesで音楽は聴けるしDVDも観れますから、携帯もmp3プレイヤーも要らなかったのです。なのに買ってしまったのは、税込み980円って価格だったからでした。其れでも、250曲も入ってしまうのですから携帯音源としては充分杉です。面白がって色々と入れてみたのだけど、安物なので「ランダム再生」しか出来ない機種なのでした。其れで、結局「片瀬那奈ちゃん音源」を77曲入れてランダム再生して毎日の通勤時間や休み時間なんかに聴いています。ん?那奈ちゃん音源が「77曲」も在るのかって?在るんだナァ、此れが。だって、僕のiTunesの「片瀬那奈ちゃんファイル」には100曲近く入ってますからね。一応「銀河系一の片瀬音源コレクター」ですので、宜しく。何故、那奈ちゃんだけになったのかと云うと、最初は他のビートルズとかビーチ・ボーイズとか洋楽も入れてたんだけど、ランダムで再生して居て折角「Babe」とか聴いてシアワセな気分でいたら次に「Surf's Up」とかが始まっちゃって「おいおい、暗いよ、次は普通に『bash』だろ?」とか思っちゃったわけで、つまり持ち歩きたい音楽って「片瀬那奈」だけだったって解ってしまったのですよ。此れでも洋楽者かよ、、、。

ま、そんだけ「歌手」いや「音楽家」としても「片瀬那奈」は、あたくしにとって重要だって事です。帰宅時には「あら、もう部屋に着いちゃったの?一曲しかマトモに聴けなかったじゃん。」とか思ってガッカリしちゃう位に「深夜の片瀬音楽は沁みる」の。もう、完全に「Shine」は「LET IT BE」を超えたよ。やっぱ「なすがままに〜」とかじゃ、何も解決しないじゃん。「想像してみろよ」とかじゃ本人も云う通り「只の夢想家」じゃん。レノマカは「夢」ばっか歌う。ジョージも「愛」だの「神」だの「理想」を語る。其れは「永遠の魔法」だけど、片瀬は「リアル」だ。もう、僕は「ビートルズの夢」だけじゃ、生きてゆけないんだよ。必要なのは「現実に立ち向かうパワー」なんだ。其れを僕に与えてくれるのは片瀬那奈だけって、単純明快な噺なのよさ。例えば、僕は「スパイラル・テープ」を愛用しているけど、何故其れが効くのかは説明出来ない。でも、確かにテープを貼っただけで治っちゃうんだから、其れで好いのさ。「何故、片瀬那奈なのか?」なんて、こっちが訊きたいよ。「片瀬那奈は効く」からってしか云えないよ。「片瀬那奈じゃなきゃダメなんだ」ってしか申し上げられませんです。

そんでもってだ、日常的にヘッドフォンで片瀬ばっか聴いていると、何故アノ頃「片瀬はライヴやTVでクチパクしてんじゃまいかっ!」とか批難された原因が、より簡単に分ります。ま、批判した連中は片瀬の実演を生で観た事が無いか、もしくは「ホウイチ」に過ぎないのですけどね。結論から云えば、「歌手:片瀬那奈」の楽曲を実演で再現するには、リード・ヴォーカルだけでも最低三人は必要なんですよ。

あたくしは「大いなる自慢」なんだけど、片瀬の実演を何十回と経験し、其のほとんどが最前列ど真ん中でした。ズルをしたら確実に解る場所から「一瞬も見逃すまいぞっ!」と、片瀬を観ていたのです。其のあたくしが断言しますが、片瀬那奈は実演で「リップ・シンクロ(所謂ひとつのクチパク)」をやらかした事は、少なくともあたくしが参加した現場では、一度も在りません。常に、片瀬のマイクは「ON」でした。片瀬は実際にリードヴォーカルを生で歌っていたのです。では何故謂れの無い批判を受けたのかと云えば、演奏は打ち込み音源(但し、実演仕様に再構築された音源なのでCD版のカラオケ流用では無い)なので演奏者が舞台に誰もいなかった事と、其の打ち込み音源に予め録音された「片瀬那奈の声」も含まれていたからでしょう。其れはTV出演時も同じで「ミュージック・ステーション」や「うたばん」等に出演した録画映像(「片瀬の館」には歌手時代のTV出演映像のほとんど全てが補完されています)を検証しても、矢張り「片瀬のマイクはON」で、同じ様に「予め録音された別の片瀬による声」と重ねられています。

片瀬のレコードで、彼女は大抵は「トリプル・トラック」で歌っています。主旋律を高音で、ハーモニーを低音で、そしてラップの様に囁き声で、三回は声を重ねているのです。例えば「Babe」にカップリングされた名曲「for you」をヘッドフォンで聴けば、とても分り易く「三人の片瀬」による三重唱を聴き分けて楽しむ事が出来ます。他の楽曲でも、基本的に片瀬那奈は三人います。正に、早過ぎた「一人パフュ」状態なのですよ。其れで、実演では其の中のひとつしか生で歌えなかっただけです。もしも、片瀬がクチパクで歌わずに踊っていただけなら、何故あたくしが最初に逢った時に彼女は「Shine」を同時に違う歌詞で歌えたり、原曲を知らず苦手にしていたカヴァー曲「禁断のテレパシー」で必ず絶句しコーラスパートのみが流れてしまったりした「実演での不可解な事実」が説明出来ません。ちなみに、「禁断のテレパシー」のオリジナル(工藤静香のソロ・デビュー曲)を本当に片瀬は聴いた事がなかった様で、事実、歌詞に登場する「プール・バー」と云う1980年代に流行った「死語」の意味すら知らなかったのです。「Extended」に収録された那奈曲は『片瀬のお気に入りの楽曲』と『スタッフ・サイドの選曲』から選ばれている為、片瀬としては「原曲を初めて聴いてカヴァーした楽曲」も何曲か在った様です。原曲の歌唱を忠実になぞった様な「物マネじゃん!」的なる印象を受ける楽曲が、おそらく其れでしょう。

片瀬音源には優れたリミックスも多く、其れらには「解体されたテレパシー・ヴォイスの元」が其の侭の状態で放り込まれていたりもします。夭折した天才:Hugeによる「Babe」のリミックスは彼と同世代の片瀬もお気に入りだった様で、実演ではバック・ダンサーズ(片瀬を含めて「テバサキ5」と、片瀬サン命名)のパート(其れは即ち片瀬の衣装替えタイムでも在った)で必ず流される定番曲でしたが、其処での片瀬によるヴォーカルは低音のハーモニー・パートを中心にした大胆な選択となっています。レギュラー版では隠れていた旋律が表に出ているので、全く別のメロディーをも片瀬は歌っている事実がハッキリと分ります。また、DVDにも収録された「カタセ日和」で録音風景を観る事も可能です。其処では、片瀬が「GALAXY」の「ウイスパー・ヴォイス・ラップ」を延々と繰り返す模様が映し出されています。レコードで、歌手:片瀬那奈は三人組だったのです。分身の術を使って「忍者影丸」状態で「テレパシー・ヴォイス」を構築していたのでした。結構、簡単に、例えば「ウイスパー・ラップ」だけをミックスする事も、現在では僕らでも可能です。個人で楽しむ範囲ではリミックスは合法ですから、お試しになってみるのも一興ですよ。CDJが無くとも、パソコンでフリー・ソフトをダウソすれば容易に出来ますからね。「777」では「DJ:NANA」による「ミ・アモーレ DJ:NANA リミックス」が披露された事も在りました。「DJ:NANA」によるリミックス盤のリリース等も、大いに期待させられたものです。

其れにしても、発売されてから六年も経過した片瀬那奈の唯一のオリジナル・アルバムで在る「TELEPATHY(其れまでのシングルA面曲も全て収録)」と其れに続いた両A面シングル「Necessary / EVERY***」の完成度は、2009年の現在でも不滅です。全く捨て曲無しで、モデル兼女優の余技など遥かに超えた「永遠のマスターピース」だと思います。片瀬のオリジナル楽曲に関わったスタッフも、UAとの仕事等で著名だった朝本さん(「Deep Forest」を作編曲演奏、作詩は片瀬)は別格として、他は当時の片瀬と同世代の新鋭(例えば「A・I・O」を作編曲制作したRAM RIDERは、其れが初めて制作した歌入りの楽曲で、本人も別タイトルでセルフ・カヴァーしている。ちなみに「A・I・O」も作詩は片瀬。)を多く起用しましたが、現在ではみんな第一線で活躍しています。前出楽曲の様に、片瀬はオリジナル楽曲の多くで作詩も担当していましたので、コトノハに説得力が在ります。僕は一貫して「Extended(2004年)」は失敗作だと云い続けていますが、其れは「2003年のオリジナル作品群が素晴らし過ぎた」からでも在るのです。片瀬那奈の歌手時代は、CDリリースでは「2002年12月〜2005年3月」ですが、事実上は2003年のみが本人が誓った「音楽に専念する」期間だったと思います。そして、其の一年間に行った活動は、レコード作品も実演活動も全てが素晴らしかったのです。何故、2004年にカヴァーに逃げる必要が在ったのでしょう?同時に始まった「777」と指向性が矛盾していました。分けが分からない侭に、片瀬那奈は2004年秋には「女優復帰=事実上の音楽活動休止」へと向かいました。チャートの成績でも、シングルもアルバムもオリジナル作品の方が上だったのです。カヴァー路線は、完全なる迷走だったと云えるでしょう。

「Necessary / EVERY***」から繋がるはずだった「幻のセカンド・アルバム」を心待ちにしていた僕は「Extended」を聴いて心底ガッカリしました。当時の公式BBSに於ける「未亜」による投稿を読み返しても「無理矢理褒めようとしている感じ」が痛々しいです。「Extended」で僕が評価しているのは、実演でのパフォーマンスだけです。アレは確かに素晴らしかった。でも、「Extended」時代の実演でも、僕はヤッパリ「MY LIFE」で地団駄を踏む片瀬の方を評価していました。オリジナルを聴きたかったんです。僕らは「TELEPATHY」の続きを待っていたのです。当時、確かに多くの那奈ちゃんファンは「片瀬那奈の音楽」に戸惑っていました。其れは「777」で登場した「DJ:NANA」に対する大いなる困惑に、顕著に出ていました。アノ頃、未だ、みんなはどうしていいのか分らなかったんです。クラブや洋楽を理解していた僕ですら「片瀬は、早過ぎた」としか云えませんでした。でもね、那奈ちゃん、時は君に追いついたんだよ。

昨年(2008年)、突如として一曲限定で復活した「歌手:片瀬那奈」の「bash」は掛け値無しの名曲です。僕らはアノ時、「Necessary / EVERY***」の次に此の世界を待っていたんだよ。どんなに時間が掛かっても構わない。那奈ちゃん、アルバム第二弾を待っていますよ。君の音楽は、オリジナルだ。当時から洋楽との類似を指摘されたけれど、其の揶揄は間違っている。どんな作品にだって、影響を受けた元ネタは在る。例えば、カイリー作品との共通点を云われたけれど、カイリーと片瀬は別だ。僕はカイリーも好きで大昔から聴いているけれど、おんなじだなんて一度も聴こえた事が無いよ。少なくとも、片瀬那奈以前に「日本語キュート・ハウス」なんて存在しなかった。片瀬那奈は、パイオニアだ。来るべきセカンドでは、ファーストでは冒険出来なかった「片瀬の眞なる音楽嗜好」も交えて欲しいと思います。

那奈ちゃん、のんびりと待っているよ。未だ、僕には「2003年音源」だけでも充分みたいだ。いや、アノ頃以上に聴いていて「切なく」なるんだよ。不思議だね。でも、其れが音楽だ。確かに、2003年の片瀬那奈は「エヴァー・グリーン」を創ったんだ。僕は生涯、此の音楽を愛すると思うよ。那奈ちゃん、有難う。


(小島藺子/姫川未亜)



posted by 栗 at 23:15| YUMEKAYO | 更新情報をチェックする