w & m:LENNON / McCARTNEY
P:ジョージ・マーティン
E:ノーマン・スミス
2E:ケン・スコット(2/18、2/20)、マルコム・デイヴィス(2/23)
録音:1965年2月18日(take 9)
MONO MIX:1965年2月20日
STEREO MIX:1965年2月23日
1965年8月6日 アルバム発売 (「HELP !」 A-3)
パーロフォン PMC 1255(モノ)、PCS 3071(ステレオ)
ジョン・レノン作のフォーク・ロックの傑作。前作から明らかにディランの影響を受けたジョンは、其れを咀嚼し「ビートルズ・サウンド」として大衆化してしまいました。恐るべき才気です。楽曲からして、ポール作の前曲「THE NIGHT BEFORE」との格差は、最早「絶望的に」勝っています。何もかもが革新的でした。全く電気式楽器を使わず、フォーク調なのにワルツのリズムで奏で、デビュー盤「LOVE ME DO / P.S. I LOVE YOU」でリンゴの代わりにアンディ・ホワイトを太鼓で雇って以来、初めて外部から客演させました。つまり、此の時まで彼等は「ジョン、ポール、ジョージ、リンゴ、そしてマーティンの五人で演奏して来た」のです。呼ばれたのは「ジョン・スコット(後のジョニー・スコット)」でした。彼が吹くフルートが実に効果的に使われています。此の曲の編曲や製作過程が、ポール&マーティンによる永遠のスタンダード(小野未来ちゃんも絶賛!)「YESTERDAY」へと直結しています。
かつて1970年代の日本では「ビートルズの楽曲は、ほとんどがジョン・レノンが作詩し、ポール・マッカートニーが作曲している」なんて出鱈目が罷り通っていました。「こいつらは『ビートルズ革命』すらも読んでないんだな」と、中学生のあたくしは呆れ「音楽評論家なんて屑だっ!」と思いました。でも、確かにジョンにはポールには無い「詩的才能」が在ります。明らかにジョン・レノン作と分る楽曲の美しい詩が「作詩はレノン」なんて誤解を生んだのかもしれません。ま、単に「レノン/マッカートニー」だから「作詩/作曲」って思ったのが真相なんでしょうけどね。
解散状態になった1970年にジョンが初めてマトモなソロ作品として発表した「ジョンの魂」は、永遠のマスターピースです。其処での「裸のジョン・レノン」に僕らは聴く度に衝撃を受け続ける。されど、ジョンは元々そういう人だったし、真実だけを歌おうとしていたのです。「悲しみはぶっとばせ」は、そのまんま「労働者階級の英雄」へと繋がっています。愉快痛快な活劇映画で、ジョンとリンゴが「悲しみはぶっとばせ」を演奏する姿に惑わされてはいけません。更に云うなら「労働者階級の英雄」と「中流階級出身で大金持ちのジョン・レノン」が歌うペテンに騙されてもイカン!のです。でも、それでも、僕らは騙された。喜んでジョンの「まやかし」を受け入れた。其れは、どんなに毒舌を吐いても、誤魔化しても、もっと云えばどんなに陳腐な邦題を付けられようとも「ジョン・レノンの真実の心」が隠せなかったからでしょう。ジョン・レノンが作った音楽は、限りなく美しいのです。もしも、其れが「演技」だとしても、僕らは信じた。心を撃ち抜かれた。どんなに中傷されても、僕らのジョン・レノンは消えません。
(小島藺子/姫川未亜)