昼の部/13:30開場、 14:00開演
夜の部/18:30開場、 19:00開演
東京芸術劇場 中ホール
HOLD ON
KOKAMI @ network vol.10『僕たちの好きだった革命』
僕はかつて「片瀬那奈の代表作は、常に『NEXT ONE』だ」と、敬愛する映画王チャップリンの名言を拝借し宣言しました。そんな「カタセ莫迦一代」にとって、昨日の「僕たちの好きだった革命」を、観劇12回目で在るにも関わらず間違いなく「最高なパフォーマンスだ!」と確信を持って喧伝出来た事実が、何れだけ幸福な事なのでしょう。僕たちファンを「己への挑戦者」と位置づけた彼女の発言に、多くの同志から賞賛と歓喜の声が届きました。
でも、僕自身が昨日の公演で最も心を撃たれたのは「踊るまどか先生の背面を魅せられた15ミニッツの奇跡!」でも「ドスの効きまくった侠気溢れるシュリンプコール」でも「二大演出家を手玉に取ったオヤジ殺し片瀬那奈の語り」でも無かったのです。其れは、矢張り舞台の本編で起こりました。
此のお芝居で僕が特に好きな場面に、山崎くんが「音楽の教科書にビートルズが載って居る!」と愕然とする処が在ります。其れを受けた未来ちゃんが「イエスタデイでしょ?あたし好きだな」と返すのですが、初演初日に其の科白が出た時、僕は突然に涙が溢れて止まりませんでした。もう役柄を忘れ、完全に現実と混同し、「嗚呼、片瀬那奈ちゃんが、僕らのビートルズを好きって云ってくれた!」と、心の底から云い知れぬ感動が押し寄せて来たのです。
そして昨日の公演で、那奈ちゃん、いや小野未来は科白に続けて♪イエスタデ〜♪と歌ったのでした。少なくとも、僕が観劇した12公演では初めてのアドリヴでした。
「すわっ!那奈ちゃんがビートルズを歌った!」
ファンってさ、こんな事で一喜一憂しちゃうのよさ。でも、僕は嬉しかった。
今回の再演でのコピーは「解散後の1970年代のビートルズ」の楽曲から選んで居ます。初演の新宿は「PET SOUNDS」を中心とした THE BEACH BOYS で、全国公演は「まーくん」こと中村雅俊さんのシングル曲からのチョイスでした。今回「1970年代のソロ作品」にしたのは、現在「THE BEATLES 全曲解説」を連載中なので被ってしまうと云う理由も在りますが、僕たち「赤盤青盤世代のビートルズ・ファン」にとって、1970年代に四人がソロで全員がヒットを飛ばして居た時代こそが「10代の青春」だったからです。
僕らは団塊の世代でも無いし、那奈ちゃんやハリケンレッドの世代でも在りません。でも作者である「鴻上さん」とは、近い世代です。山崎くんにもなれず、未来ちゃんや日比野くんにもなれない僕が感情移入するのは「物語」しか在りません。僕が此の作品を愛するのは、鴻上さんの視点への共感ゆえなのでしょう。
(姫川未亜)