「夜のヒットスタジオ」ってお気に入りの番組で、あたくしはずっと観ていました。ヴィデオを購入した80年代中頃からは、出演するほとんどの女性アイドルと日本語ロック系を録画してもいたのです。1990年前後には、日本の音楽界もすっかり様変わりしたとゆーか、其れまで一家全員で楽しんでいた歌謡界が崩壊し、世代ごとに好きな音楽を選ぶ様になって行きます。「夜のヒットスタジオ」の楽しさのひとつに最初にリレーで次の出演者の持ち歌を歌って紹介してゆくって趣向が在って、例えば「三波春夫せんせいがトシちゃんの歌をうたう」なんて摩訶不思議空間が毎週生放送で展開されていたのでした。其れが、従来のカタチとロック系と演歌系の三分化して放送する様になってしまいます。
そんな時にあの「タイマーズ事件」が起こったのでした。数曲をメドレーで歌うと云う破格の待遇で登場したタイマーズは、弐曲目の「偽善者」を歌わず、レコード化出来なかった「FM東京」を演奏したから、さあ大変。放送禁止用語連発で名指しで「FM東京(現・TOKYO FM)」を批判した其の曲は、ヴォーカル:ゼリーの分身で在るキヨシローが山口冨士夫ちゃんの為に書いた「谷間のうた」が放送禁止になったことに抗議する為に書かれたのです。
当時地方在住だったあたくしは、録画しながら生放送で事件に遭遇しました。「すげえよ、昔のGSみたいじゃん!」と思いました。例えば、カップスのルイズ・ルイス・加部が生放送中にナイフで司会者に「ぶっ殺してやる!」と向かってった事件とかを思い出したんです。GSって、本物の不良だったんです。なにせ、NHKに出演出来なかったんですからね。
ところがだ、東京では特番が入り壱時間遅れで放送されたと後で知ったのです。タイマーズの出番は中盤で、充分に番組を差し替えることは出来たのに、CXはそのまんま流したのでした。にやり。
初出「COPY CONTROL AGAIN」 (小島藺子)