KOKAMI @ network vol.9『僕たちの好きだった革命』は既に6公演行われ、本日は休演。東京では、明日からの残り8公演となりました。丁度中間地点まで来た処で、ブログなどを検索すると大変評判が良いです。特に、「片瀬那奈」が大きく株を上げています。まあ、其れには理由が在りますね。
早い段階で見に行く方々には、所謂「演劇通」も多い様で、其の手の方がより片瀬を「演劇的に」褒めていました。普通のひとは「那奈ちゃんは綺麗でした」「ミニスカで脚が長かった」ってな感じの「デスノート」と変わりの無い評価です。
演劇を好む人には、映画は兎も角、テレビドラマなんかは小馬鹿にしておられる傾向も在る様です。「鴻上の舞台は観たいが、なんで片瀬那奈なんてキャンギャル、モデルあがりのCMタレントなんぞにヒロインをやらせるんだ?」とハナから全く期待していません。「お嬢様TVタレントのヘボ演技を叩いてやろうじゃないかっ、舞台の厳しさをおせーてやる」って気さえ在って、観劇してみると、片瀬クンは堂々とした舞台女優ぶりをみせていたわけでして、そりゃ吃驚しますよ。
「片瀬那奈があれほど出来るとは意外だった」とか「声も通るし、スタイル抜群で動きも舞台慣れしていて、正直大いに見直した」とか「表情が豊かで完全に舞台女優向きだと感じた。今後ともぜひ舞台で活躍して欲しい」などなど、
つまり彼らは単純に「片瀬那奈」を知らなかったのです。「見直した」んじゃなくって「初めて観た」んです。あのね、あたくしだって片瀬クンの舞台を観たのは初めてなんですよ。此れは、彼女の初舞台なのです。
かつて歌手デビューの際に名前を隠したのも、「片瀬那奈」のイメージで音楽を捉えられるのを危惧したからでした。案の定、片瀬那奈の名が出てしまうと「モデルあがりのアイドル女優のお遊び」と云われました。そう云った連中は、おそらく彼女のアルバムを聴いてはいないでしょう。
「きれいなおねえさん」のイメージが強い片瀬那奈ですが、其れはもはや「綺麗な人」と云う意味でしかないから誤解が生じます。もう5年以上も前に流れていた「その毛のない人 篇」「おはようの髪 篇」「カンフー 篇」「ストレッチ 篇」の4本を見直してみれば、其処には「ぼくらの大好きな片瀬那奈」がちゃんといます。片瀬那奈の本質は、何ら変わっていません。
一番厳しい意見を云えるのは、昔から片瀬那奈を見て来たぼくらなんです。愛するがゆえに、変節は許せません。だからアノ頃「ラスクリ」や「ジーン」を、僕は叩いた。はたして、初日を観たぼくらは、口々に絶賛しました。初日と楽日しか押さえていなかった者たちは「もっと観なきゃダメだっ!」と、己を責めていました。
だって、舞台の那奈ちゃんは、大きく口を開けて、顔をくしゃくしゃにして笑ったり叫んだりしていたのです。初めてグラビアで観た時とおんなじ無防備で天真爛漫な子供みたいな表情で、25歳の大人の女が走りまわっていたんです。野外ライヴで一緒に騒いだ時の様に、全身全霊で踊っていたんです。
昨日まで四公演、「ずっとずっと大好きな那奈ちゃん」を目の当たりにしながら、僕は幸福感と同時に、少しだけさみしさを感じて居ました。其れは、きっと、こんな子供っぽい感情なんだと思います。
「あ〜あ、僕だけの宝物が、とうとうみんなに見つかっちゃった。」
初出「COPY CONTROL」 (姫川未亜/小島藺子)