片瀬那奈の「Extended(2004)」は、全那奈曲の1980年代女性アイドル・カヴァーで構成されています。中森明菜の楽曲が2曲選ばれていますので、カヴァーの対象となったのは6組です。(「何故、中森明菜だけ2曲なのか?」に関しては、後に詳しく述べます。)その6組とは「松田聖子」「中森明菜」「小泉今日子」「浅香唯」「工藤静香」「WINK」であり、何れも確かに1980年代を代表するアイドルではあります。
しかしながら、前者「聖子」「明菜」「キョンキョン」が、「間違いなく彼女たちでなければならなかった」のとは違い、「浅香」「工藤」「WINK」は「別に彼女たちでなくともよかった」と、あたくしは断言します。
ゆえに「聖子(第2章)」「明菜(第6章)」「キョンキョン(第5章)」と、それぞれの章でじっくり語らなければならないのですが、他の3組に関しては個人というよりも「ソレが代表するモノ」についてのお話になります。前章で述べた様に「工藤静香」とは「おニャン子クラブ」を象徴する為の選出です。ですから、別に「国生さゆり」でも「渡辺美奈代」でも「渡辺満里奈」でも、誰でも良かったのです。(流石に「山本スーザン久美子」では困りますけどね。)
事実、片瀬本人は「禁断のテレパシー」を「カヴァーするまで知らなかった」と語っています。ミニアルバムからの先行第二弾シングルでもあった楽曲ですが、ライヴでは歌う度に歌詞を間違えたり絶句したりしていました。(しかし、何故か、うたは流れていた。)そして、この第二弾シングルが当初一部メディアで「赤道小町 ドキッ」と告知されていた事実からも、選曲への迷いが伺えます。制作サイドには、全那奈曲で「何か」を伝えたい明確な意図があったと思われます。それが如実に現れたのが実は「浅香」「工藤」「WINK」のセレクトだと、あたくしは深読みしています。
繰り返しますが、工藤はあくまでも「おニャン子」と言う「集合体」を現しています。そして「WINK」は二人組の代表であるのは明白です。(WINKをカヴァーするのは、片瀬の意見が通ったと言われています。)さらに「浅香」は「風間三姉妹」のトップとして頭角を現したのですから、三人組の象徴として選出されているのではないでしょうか。
「聖子」「明菜」「キョンキョン」と誰もが認める重要アイドルを核とし、それらの楽曲に関わった作者陣をも巻き込むことで前史までもを示唆出来るのですが、そこに「二人組」「三人組」「集合体」という「ユニット」を加えることで、たった6組那奈曲の世界が「大いなる歌謡曲史」へと、正に「拡大」しえるのです。
「そんな片瀬が到達したのが「Extended(2004)」でした。このカバー・アルバムにこそ「歌謡曲の謎」が詰まっています。」(「第1章の1」より)との結論に、一点の曇りもありません。
前置きが長くなりましたね。てなわけで、この第4章では「浅香唯」と「WINK」が象徴する「ふたり」と「三人娘」について、じっくりと語らせて戴きますので、そこんとこ、ヨロシク☆(つづく)
初出「COPY CONTROL」 (小島藺子/姫川未亜)