イコ:おまえ、なんだかんだ言って京都と神戸に逝った(死語)んだってな。
未亜:姐御も来たじゃん。
イコ:はあ?現地からの報告じゃ大丸京都店(みせ)に開店と同時に入って会場にへばりついていたのは「ひとり」だけってことだったぞ。あたくしが居るわけねーだろ。
未亜:いや、姐御も観てただ。おら、知ってるだ。
イコ:冗談じゃないわよ。何?もしかしてアレのこと?
未亜:アレってなんれすかぁ〜。
イコ:だからアノアレだよ。へらへら笑って、フロアに座り込んで、いきなりアンパンとコンソメポテチ二袋を平らげたと思ったら、婦人服売場の鏡にシャツをめくり上げて腹を出した姿を映したりして、うろちょろ徘徊し、ショーが始まったら片瀬クンに布切れを振りまくっていた小剛竜馬みたいな「キモヲタ」だよ。おまえは目を合わさない様にビクビクしてたじゃまいか。でもな、ショップの方々には、おまえもあのキモヲタも「おんなじ」に見えてるんだよ。
未亜:やっぱ、姐御も遠征してたんじゃないのよさ。アノ奇妙な物体を、そこまで認識してるのが証拠だね。
イコ:うんにゃ、あたくしには千里眼があるからね。君の目はあたくしの目なの。それに、君はそんなこたぁ言えないキャラだろ?良かったな、あたくしが居て。あ〜あ、あたくしも遠征したかったにゃあ。
未亜:東京に居ながらにしてボキの目で那奈ちゃんを堪能してたのかよ。酷いよ、姐御。
イコ:生で観なきゃ意味ないよ。未亜たん、偉いぞ。うん、よくぞ遠征してくれたよ。あたくしは嬉しいよ。もっちりも汗も堪能したんだもんな。特になにげに脇に徹した振りをして「アップ髪の片瀬クンと目線バチバチのポジション」を確保した神戸での姑息な動きには感服したわよ。アレが未亜たんの真骨頂だよ。
未亜:な、なにを言ってんですかっ!ボキはね、大丸京都みせ一番乗りで、始まるまで三時間立ちっぱなしで正面を確保はしましたよ。ええ、どーせボキは待つだけの漢でございます。あの真っ正面の位置は良かったですよ。また拝んじゃったし。でもさ、そりゃはるばる遠征したんだから当然だろ。でもね、神戸は那奈ちゃんの予告通り「タイミングが勝負」だったの。あの必殺ポジションは偶然なんだよ。神様がくれたの。
イコ:けけけ、おまえ必死だな。ま、未亜たん、ツイテたね。
未亜:なんだかわかんないっす。頭がおかしくなった!
イコ:おっ!片瀬クンの名言が出ましたよ。
未亜:なんですぐ反応するかな。やっぱ、姐御も遠征してたんじゃないの?
イコ:うんにゃ、あたくしは東京に居たわよ。
未亜:だったらマドンナの先行は取ったんでしょうね?頼むよ、姐御。
イコ:ん?ああ、ゴメン、忘れてた。
未亜:姐御がマドンナを忘れるなんて有り得ないよっ!!東京に居たってのに、一体何をやってたんだよぉっ!!
イコ:おまえの目を借りて、片瀬クンの美しさに見蕩れていたのさ。
初出「COPY CONTROL」 (小島藺子/姫川未亜)