「小早川伸木の恋」が視聴率で苦戦(1話 13.9%、2話 11.8%)しています。ドラマには視聴者にとって、数字が良くても「つまらん」モノ(今期だとサルとか)もあるし「高視聴率だから途中からでも見ます!」なんて話にもなりませんので、ま、どーでもええって云っちゃ、それまでなのですけど、制作者サイドとしちゃ「数字がすべて」って世界でも在りまして、主演の唐沢さんなんかは「白い巨塔」での高視聴率って期待感もあったでしょうから、ここまでコケると大変でしょうね。(片瀬「唐沢さん、あたしの力不足で御迷惑をお掛けして申し訳ありませんっ!」唐沢「おまえ、それは皮肉か?」)
あたくしとしては、「片瀬那奈ちゃんが出演している」と云うだけで、全話観るのは当然なのですが、どーせならドラマとしても面白くなってもらった方がいいわけですね。その為には原作を読んだり、色々と楽しむ為にやらねばならぬことがありますなぁ。それも、また楽し。
片瀬那奈ちゃんが女優復帰を果たした「ラストクリスマス」(04-10〜12)や次作でゲスト出演の「不機嫌なジーン」(05-1〜3)などは、正に「片瀬那奈ちゃんしか観るべきところがない」ドラマでした。余りの酷さに「なんで復帰しちゃったんだよ、那奈ちゃん」と枕を濡らす夜がつづいたものです。しかし、その後に出演した「離婚弁護士II〜ハンサム ウーマン〜」(05-4〜6)「香港バタフライ」(05-9〜11)「熟年離婚」(05-10〜12)「いい男はマーケティングで見つかる」(05-11〜12)の諸作は、ドラマとしても楽しめたし、何よりも那奈ちゃんが成長していく過程を実感出来る有意義な時間でした。
そして「女優・片瀬那奈」が勝負を賭けた役が「小早川妙子」です。もう妙子だけを観ていればいいのだけれど、かつての「ラスクリ」なんかとは決定的な違いがあるのです。藤澤律子は「ラストクリスマス」の世界から浮いていました。くだらないドラマだったけれど、その世界を愛する方も多かったのでしょうから「片瀬イラネ」と云われても仕方なかった。こっちだって「他全員イラネ」と思ってたんだもん。小早川妙子に対しても「片瀬イラネ」の声は出ています。でも、今回の「イラネ」は「どーでもいい」ではなく「うるさい、うざい、いらつく」なのです。もはや「妙子」なしでは、あの世界は成立しません。そして、妙子はそこから更にはみ出そうとしています。ありえない程エキセントリックな奥さんでありながら、彼女に感情移入させてしまう「何か」を片瀬那奈ちゃんは表現し始めました。
「女優・片瀬那奈」が化ける瞬間に、今、あたくしたちは立ち会っているのです。なんという、至福の時なのでしょう。御本人も実生活まで「妙子化」しそうなほど役にのめり込んでおられるとのことです。ま、そんな時でも、しっかりアゲハで朝まで大沢伸一さんや田中知之さんと呑み明かす那奈ちゃん、やっぱ、きみは最高だよ。
初出「COPY CONTROL」 (小島藺子/姫川未亜)