take 1「石を転がせ、もしくは転がる石」「ローリング・ストーン誌」はランキングが大好きだから、いや他に企画が無いのかもしれないな。「偉大なアルバム500」はやってしまったから今度は「偉大な曲500」と来たもんだ。其れでアルバムはビートルズの「SGT. PEPPERS」が首位で、曲はディランの「LIKE A ROLLING STONE」になった。理由は同じ様なモノで、よーするにロックの既成概念を打ち破り現在まで強く影響を及ぼして居るってことだな。只、此れは少しだけ変なんだよね。ロック自体が既成概念をこなごなにしてくモンだったわけだから、此処はロックをつくったってことにしないとな。そのへんを曖昧にするとロケンロールをつくったチャック・ベリーが一番偉いってことになるし、なんでレイ・チャールズとかマーヴィン・ゲイとかアレサ・フランクリンの曲がTOP10に堂々と入って居るのかも分らなくなって「オー!コレはロックじゃないよねー」なんてJ-WAVEのへっぽこナビゲーターに吠えられちゃうのよ。やれやれ。
アルバムに関して云うなら、ビートルズの其れは昔から「名作」と云われて居ました。少なくともあたしが最初に聴いた時(発売から那奈年位経ってたかな)には「ロックの金字塔」とか云われてたのよさ、さのよいよい。簡単に云うなら、コンセプト・アルバムの元祖だと云うわけです。此れに関しては異論も多々在りますけど、個人的には決してビートルズの最高傑作(つまりは今だにロックの最高傑作)が此れではないと思います。結論から云うと、ビートルズと云うバンドは最後まで「最高傑作」を作れなかったバンドでした。其れでもやはりビートルズのアルバムを選ばなくてはならないのが辛い処ですね。他に居ないのかよ、うふふ、居ないんだよね。U2の新譜ええなぁ、ヤア!ヤア!ヤア!
曲の方は、ディランでいいんじゃないかな。でも分らないと思うんだよなぁ、なんでディランが偉大なのかってことを絶対みんな解ってないよね。簡単に云うと、今ロックって云われてる音楽をつくったのがディランなんだけどさ。このひとが居ないと後が続かないんだよ。クリームもジェフ・ベックもツェッペリンも出て来れないんだよなぁ、あーゆーことを最初にやっちゃったんだもん。でも此の曲を聴いただけじゃ其のへんは全く理解出来ないよね。そー云えばディランのライヴを観た時に聴いた此の曲は、サビを歌い出すまで気が付かなかったなぁ。
take 2「誰が聴くんだよ?犬か?」其れにしても2004年にもなって1960年代のアルバムや曲を「偉大だ!!」と語られてもなぁ。今の購買層は誰も生まれてないよ。何だか教科書を読めと云われてるよーで、つまんねーよな。でもさ、ブライアンの「SMiLE」の話は前回一寸だけしたけど、今度はビートルズの「THE CAPITOL BOX VOL.1」ってのが出たぞ。「SMiLE」の場合は本当に40年近く幻の音楽だったけど、何て云うのかなぁ、つまり音楽ってのは此れなんだろうね。「懐かしのメロディー」にならないのに「懐かしいうた」ってのがええんじゃないのかな。
ビートルズの箱は日本盤がCCCDなので、安くてまともなCDの輸入盤を買う方がええぞ。解説なんかはネットなり雑誌なり読めば充分。アメリカ編集盤仕様ってのがせこいけど、初期のビートルズをステレオとモノラルでがんがん聴けるんだから円高で輸入権行使前に、カッチマイナーッ!!だな。初期の曲のほとんどがCDになってから初めてステレオになったんだけど、アナログ時代以上に「泣き別れ」してる感じでええぞ。昔は片チャンでカラオケにして遊んだモンだけどな。其れにしても何で40年も前の音楽が「こんなにも美しくて素敵」なんだろうな。
そー云えば10年前にSUGAR BABEの「SONGS」が発売後約20年を経てオリジナル・ミックスでCDになったんだけど、なんとオリコンで3位の売り上げになってしまったんですよぉー、一寸した事件だったんですよぉー。中心メムバーだった山下達郎は「当時は500枚位しか売れなかったのに、どうなってるんでしょうね。まぁ、よっぽど今の音楽がつまらないんじゃないですかぁ?」と「にやにやみあみあ」して語って居りましたな。
take 3「音楽みたいなモンは古いモンの方がいいんだよ」此れは大滝詠一師匠が昨年「恋するふたり」をリリースした頃にラジオで「次は20年ぶりのアルバムですね?」みたいな質問に答えたモンです。大滝さんは御存知の様に「はっぴいえんど」でデビューして、在籍中にもソロ・アルバムを制作し、解散後はナイアガラを立ち上げ、諸事情に寄って全く売れないアルバムを1970年代に量産しました。苦節何百年を経て1981年に発表した「A LONG VACATION」の爆発的ヒットによって世に出たのち、1984年の「EACH TIME」を最後にオリジナル・アルバムを20年も発表していないわけです。
いやぁ、やっぱこりゃすごいや。生きながらジョン・レノン状態だよ。活動休止?以後も色々なカタチで作品化がされて居る為、ひとびとが大滝さんを忘れないのです。ちなみに21世紀になってからも大滝さんの新作アルバムは出ているんですなぁ。2001年は「ロンバケ」20周年記念リマスター盤、2002年は「トライアングル2」20周年記念リマスター盤、で2003年はネタがなくて仕方なくマキシ盤を発売、2004年は「EACH TIME」20周年記念リマスター盤です。あ、20周年ネタが終わっちゃったよ。「はっぴいえんど」の箱も出てしまったしねぇ。さて来年からはどーするんでしょう?師匠は言いました(本当です)「2005年はNIAGARA MOONの30周年なんだよね、だから其れを皮切りにずっと毎年30周年リマスター新作が出ます」すぎょい!すぎょすぎる!!だが、問題は在る。1979年と1980年にアルバムを出してないんだよね。当然1989年、1990年、1999年、2000年も無いんだよね。だから大滝さんの新しいオリジナル・アルバムは、たぶん2009年に出ますよ。其の頃師匠は還暦過ぎてますけど、きっとええアルバムだよ。「初めて聴くのに懐かしい」ってみんなが思うでしょう。
take 4「メジャー・セブンの不安とボサノヴァ」1964年はビートルズがアメリカ制覇した年ですけど、坂本九は前年にアメリカ制覇を果たしているんですなぁ。1963年の世界ではビートルズよりも九ちゃんの方が有名だったわけです。だからジョンの「ぼくらは今やキリストよりも有名だ」発言は誤報で「ぼくらは今やスキヤキより有名だ」と云ったのです。ちなみに1966年に来日した際には、若大将とスキヤキを食べたそーです。此れは加山雄三さんが云ってたから、たぶん本当です。
話を1964年のアメリカにもどすと、此の年はボサノヴァが進出した時でも在ったのですね。当時のビルボード・チャートを見ると「抱きしめたい」と「イパネマの娘」が並んで居ます。アメリカン・ポップスはブリティシュ・インヴェンションだけでなくブラジルにも脅かされていたのですね。そして、当時の「ミュージック・ライフ」に小林旭さんのインタビューが載っていて、其処で彼は「オレは最近輸入盤でゲッツ・ジルベルトってぇのを手に入れてさ、コレがいいんだよ。ボッサノーヴァって新しい音楽なんだけど、コレは来るぞ。オレは今年はボッサノーヴァの年になると思う」みたいな物凄い事を云って居るのです。「ゲッツ・ジルベルト」が発売されたのは1963年ですが、驚くべきことにアキラは1963年1月に既に「アキラでボサ・ノバ」を発表しています。録音は前年の11月で、ビートルズがイギリスでやっとデビューした頃には、もうボサノヴァをやっていたんですよ。此れは本当に凄いことです。
ボサノヴァの魅力は、其の不安定な和音に在ると思えるのです。世界のサカモト教授がボサノヴァ好きなのは有名ですけど、かつて今井美樹ちゃんと歌ったオリジナル・ボサノヴァ「二人の果て」と云う楽曲を最初に聴いた時、何とも云えない不安感を覚えました。バート・バカラックが得意とする不協和音(メジャー7やマイナー7を代表とする)を多用した楽曲も琴線に触れるのですが、其れは不安感なのではないのかと思えるのです。外して居る処に、私たちは惹かれて居るのでしょう。
東京事変の「教育」にもルートを外した楽曲がいくつか収録されて居ます。椎名林檎はもともと、こーゆー楽曲を書くひとですが、どうもいよいよ極まって来た感じがします。途轍も無い傑作を作ってしまうかもしれない危うい作曲能力が彼女には在ると思うのですが、楽曲自体の素晴らしさよりパフォーマーとしての魅力が勝ってしまった処が其れを見えにくくして居る様です。でも其れはきっと、私たちにとって幸福なことなのでしょう。
take 5「衣食住よりも音楽を愛した日々」金銭感覚がレコードを基準にして居るってことを変だとは思わない。レコードを買う為に昼メシを我慢した経験を持つ奴を、沢山知っている。音楽は其れだけの価値が在るモノだし、何かを得るに何かを失うのは当然のことだった。服を買う時、食事をする時、家具を買う時、いつもCDに換算して居る自分が居る。あの頃とは違って、我慢しなくとも音楽は手に入るのだけどね。
take 6「栗を食べるイコと其れを見る未亜、其の背後から忍び寄るへび娘。」「また意味のないことを書いてしまったな」
未亜とはイコの娘で在って、イコとは、もともとタコだった。彼女は「BLUE VELVET BACKFINGERS & TACO」なるグループの中心人物でドラマーだった。本名は「XXXXX」と云い、かつて某所では「怪物」とか「妖怪」とか、まあそーゆー類いの奴で正式には「エネルギー泥棒」と云うらしい。
「BLUE VELVET BACKFINGERS & TACO」のメムバーは
イコ(TACO):ドラムス&歌
未亜:コーラス&ウクレレ
まゆみ:コーラス&鍵盤
BLUE:ベース&ギター
此のグループは「FLYING TAECO BAND」に居たイコ(TACO)とBLUEが、メロディー重視のエム&ミニイに反抗して分裂し結成された。現在、イコと未亜が「栗」と云うプロジェクトを組んで居るが、既にBLUEとまゆみは密かに参加して居る様で、今後袂を分ったMMコムビやその他の多くのメムバーが集結する可能性はないわけでもない。そんなことより問題はイコがTACOにもどるかもしれないってことだ。もしもそうなったなら、未亜やまゆみなど何の役にも立たない。
take 7「待ってておくれ」F#m
A
D
E7
「もういちどみてよ」 「だからないよ」
「うそだーあるでしょ」 「ないないない」
「あいじゃない」 「ないないない」
「そこがたりない」
さ、やろうか、郵便屋さん。
ん?F#mってどう押さえるかって?んなもん簡単だろ、つまりG♭mとおんなじだよ。
初出「hilite」 (小島藺子/姫川未亜)