
ビートルズが、1967年5月26日(英国パーロフォン)・同年6月2日(米国キャピトル)にリリースした、8作目のオリジナル・アルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」は、全英23週連続首位!・全米16週連続首位!と、爆発的に売れました。このアルバムから全世界共通内容となったので、それまで水増しアルバムを買わされていた米国では、特にその衝撃は強く、ビートルズの最高傑作と云われています。近年では、1966年リリースの前作アルバム「REVOLVER」や、1968年リリースで2枚組の英国では次作アルバム「THE BEATLES(ホワイト・アルバム)」や、時系列的にはラスト・アルバムとも云われる1969年リリースのアルバム「ABBEY ROAD」などの人気も高まっていて、アルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」はそれほど持ち上げる内容ではないと云う意見もあります。しかしながら、現在までつづくビートルズのリイシュー企画は、全てがアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」を起点としています。まず、ビートルズの初めてのピクチャー・レコードは、1978年にアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」から始まっています。ソレは、ピーター・フランプトンとビー・ジーズが主演した映画「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」に便乗したのですけれど、その全てがビートルズ・ナンバーをカヴァーしたサントラ盤は、サー・ジョージ・マーティンがプロデュースしていて、自らの最高傑作に泥を塗った、などと酷評されました。
1987年にはビートルズのアルバムが初CD化されたのですが、ソレはアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」の出だしの歌詞が「It was 20 years ago today」である事にかけて、アルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」の20周年記念として行われています。故に、CD「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」が1987年6月1日にリリースされていて、他のアルバムは普通のプラケース入りだったのに、アルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」だけはプラケースが紙のケースに包まれていて、解説のブックレットやオマケも付いた豪華版でした。他のアルバムは、アルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」の20周年に合わせて、全てが1987年に初CD化されたのです。1995年から1996年にかけての「ANTHOLOGY」プロジェクトも、特に映像版に関しては、1992年にアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」の25周年記念として制作された映像作品である「THE MAKING OF SGT. PEPPER」が起点となっています。1999年には、初めてサー・ジョージ・マーティン以外の人物(ピーター・コビン)がビートルズをリミックスして、アルバム「YELLOW SUBMARINE SONGTRACK」がリリースされています。内容は、アニメ映画「YELLOW SUBMARINE」に使われているビートルズの楽曲を、大胆にリミックスした音源集でした。
アルバム「YELLOW SUBMARINE SONGTRACK」の内容は、1「YELLOW SUBMARINE」、2「HEY BULLDOG」、3「ELEANOR RIGBY」、4「LOVE YOU TO」、5「ALL TOGETHER NOW」、6「LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS」、7「THINK FOR YOURSELF」、8「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」、9「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」、10「BABY YOU'RE A RICH MAN」、11「ONLY A NORTHERN SONG」、12「ALL YOU NEED IS LOVE」、13「WHEN I'M SIXTY-FOUR」、14「NOWHERE MAN」、15「IT'S ALL TOO MUCH」の、全15曲入りで、アニメ映画に使われた楽曲なのですけれど、何故か「A DAY IN THE LIFE」が選曲から漏れていました。アルバム「RUBBER SOUL」から2曲(「THINK FOR YOURSELF」、「NOWHERE MAN」)、アルバム「REVOLVER」から3曲(「YELLOW SUBMARINE」、「ELEANOR RIGBY」、「LOVE YOU TO」)、英国ではアルバム未収録シングルから1曲(「BABY YOU'RE A RICH MAN」)、サントラ盤「YELLOW SUBMARINE」から重複する「YELLOW SUBMARINE」を抜けば5曲(「HEY BULLDOG」、「ALL TOGETHER NOW」、「ONLY A NORTHERN SONG」、「ALL YOU NEED IS LOVE」、「IT'S ALL TOO MUCH」)、そしてアルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」から4曲(「LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS」、「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」、「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」、「WHEN I'M SIXTY-FOUR」)です。
メインであるサントラ盤「YELLOW SUBMARINE」からの6曲を除けば、アルバム「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」からの4曲が最も多く選曲されていますし、未収録ながらアニメ映画には「A DAY IN THE LIFE」も使われています。このリミックス盤「YELLOW SUBMARINE SONGTRACK」は、2003年のリミックス盤「LET IT BE... NAKED」と共に不評で、2009年9月9日にはビートルズのアルバムがステレオ・ミックスとモノラル・ミックスでリマスターされて、一件落着となったのです。ところが、2015年にベスト・アルバム「1」と「1+」がCDとDVDとBDでリリースされて、そこでサー・ジョージ・マーティンに代わって息子で後継者であるジャイルズ・マーティンと、エンジニアのサム・オケルによるリミックスが開始されました。そして、50周年記念として2017年に箱「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」がリリースされたのです。ソレが現在まで継続している「ビートルズのリミックス・アルバム」の出発点でした。この様に公式盤では周年記念盤をリリースしているわけですけれど、その隙を突いて、ブートレグ業者も更に踏み込んだ音源集をリリースしています。後に取り上げますが、例えば公式盤の箱「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」は、4CD+1DVD+1BDだったのですけれど、同じ2017年には6CDのブートレグがリリースされています。今回取り上げるのは、2007年に「misterclaudel」からリリースされたCD2枚組のアルバム「MULTI-TRACKS FROM SGT. PEPPER 1967」です。
2007年リリースなので、勝手に「40周年記念盤」などと謳っておりますが、正真正銘のブートレグでございます。内容は、CD1が、1「A DAY IN THE LIFE」、2「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」、3「SHE'S LEAVING HOME」、4「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」、5「A DAY IN THE LIFE」、6〜7「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」、8〜9「A DAY IN THE LIFE」、10〜11「SHE'S LEAVING HOME」、12〜14「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」、15〜16「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」、17「A DAY IN THE LIFE」、18「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」の、全18トラック入りです。1「A DAY IN THE LIFE」から、7「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」までは、モノラル・ソースからのなんちゃってリミックスで、8「A DAY IN THE LIFE」から、16「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」までは、ステレオ・ソースからのなんちゃってリミックスで、17「A DAY IN THE LIFE」と、18「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」は、ステレオなんちゃってリミックスです。2007年と云うと、まだゲーム「ROCKBAND」もなくて、アウトテイクの元ネタとしては「THE MAKING OF SGT. PEPPER」と「ANTHOLOGY」位しかなかったので、涙ぐましい編集で「マルチトラック」風にリミックスしています。
CD2は、1〜4「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」、5「SHE'S LEAVING HOME」、6「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」、7「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」、8「SHE'S LEAVING HOME」、9「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」、10「A DAY IN THE LIFE」、11「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」、12「SHE'S LEAVING HOME」、13「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」、14〜15「A DAY IN THE LIFE」、16「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」、17「A DAY IN THE LIFE」の、全17トラック入りで、合計35トラック入りです。CD2は、全てがステレオなんちゃってリミックスなのですけれど、コレは何なのかと申しますとですね、4チャンネルでのレコーディングだった楽曲を、ヴォーカルだけとか、コーラスだけとか、演奏だけとかに、なんちゃってリミックスして前面に出しているんですよ。全35トラック入りですが、収録されているのは「SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND」と「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」と「SHE'S LEAVING HOME」と「A DAY IN THE LIFE」の4曲だけです。ソレがですね、繰り返し、なんちゃってリミックスされて登場するわけで、こんなモンはとても初心者のファンの方々にはオススメ出来ません。元々、ポールが後でオーバーダビングしたベースが目立つのに、更にリード・ベースみたいに前面に出ていたり、リンゴが歌う「WITH A LITTLE HELP FROM MY FRIENDS」が繰り返し歌われるところなんて、聴いているのは、ちょっとした苦行です。
(小島イコ)
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